群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2021 Winter
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本学では小型重粒子線治療装置の実証機として、2010年3月に重粒子線治療を開始しました。治療実績は順調に推移し、2019年度の実績では年間673名の患者さん、この10年間で累計4,048名の患者さんに対して治療を行いました。この装置を用いて大学としての教育・研究を行うことは本装置の目的の一つでもあります。本学では、大学院に重粒子に関連する講座を設置し、国内外の学生を受入れて本装置を用いた教育を実践しています。また、重粒子線治療装置を導入すべく準備段階にある他施設からスタッフを受け入れて研修を行っています。研究面においても学内の研究者が本施設を利用するほか、国内外の研究機関と重粒子に関する研究交流も活発に行っています。2019年度は、群馬大学基金を活用し、重粒子線治療装置を安定に稼働できるように制御計算機を最新のものに更新しました。最新のシステムを搭載した制御計算機が導入されたことにより、今後も重粒子線治療や装置を用いた教育・研究を安定して行うことが可能となりました。また、2016年度からの継続事業として、重粒子線マイクロサージェリーの臨床応用に対する研究開発を行いました。私は他2名の学生とともに2019年10月30日から11月5日までボストンに滞在し、合成生物学の世界大会"iGEM"に参加しました。"iGEM"は「生物版ロボットコンテスト」とも呼ばれ、遺伝子組換え実験によって大腸菌などに狙った機能を持たせ、その機能や過程についてプレゼンテーションして競い合うものです。去年は世界中から来た優秀な学生6000人以上(353チーム)がこの大会に参加しました。私は入学前からこの"iGEM"に参加したいと強く希望しており、日本には京都大学、東京工業大学、岐阜大学など幾つかの大学にも"iGEM"チームがありましたが、群馬大学にはチームがなかったため2017年の入学後に自身で設立しました。その後、メンバーを集めてから約2年かけて様々な下準備を進め、2019年春から秋にかけて実際に遺伝子組換え実験を行い、ボストンで開催された大会に臨みました。現地では英語でプレゼンテーションやポスターセッション、質疑応答を行いました。この"iGEM"は取り組むべき活動が多岐にわたり、メインである実験以外にもクラウドファンディング等を利用した活動資金の調達や、英語でのプロジェクトwiki(プロジェクトの全てをまとめたウェブページ)の作成、地域貢献活動の一環として行った群馬県立前橋女子高等学校での遺伝子リテラシー出張講義など、様々な経験を通して大きく成長することができました。一方で活動中はリーダーという慣れない立場に対する戸惑いや、メンバーを上手くまとめられないことによる悩みなどもありました。しかし、幸運なことに得難いメンバー、先輩、指導教員に恵まれ、そして大学関係者の方々に温かく応援していただいたことで、最終的には銅メダルを獲得することができました。また、大会に参加する上で約180万円の活動費用が最大の障壁でしたが、その中で最も高額なチーム登録費(約56万円)の大部分を群馬大学基金グローバルチャレンジプログラムの奨学金で賄うことができ、感謝の限りです。他のチームの方からも「初参加チームで大きな自己負担なく参加できることは非常に稀なので、本当に恵まれたね」とコメントされたり、「チーム登録費をはじめとする活動費用が壁となり参加を断念するチームも割と多い」という話を聞いたりしました。学生にとって、資金不足によって様々な活動を諦めなければならないのはとても辛いことなので、群馬大学基金のような仕組みは本当に有難いです。後輩たちも自分の可能性を伸ばすために、積極的にこのような機会に応募すべきだと思います。今回の経験を糧に、今後ますます学業や研究に励んで参ります。重粒子線治療の普及・発展に資する事業その335GU'DAY Issue 09 |

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