浜松医科大学 NEWSLETTER 2023.3(Vol.49 No.2)
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sweN inmulA◀ 横浜市立大学附属病院▲ 同門会の教授就任記念の集い(2022年12月24日開催)  浜松医科大学名誉教授 戸倉新樹先生にご来賓としていらしていただきました。 皆様、こんにちは。私は、平成12(2000)年3月に医学科を卒業した21期生の山口由衣と申します。令和3(2021)年5月より横浜市立大学医学部皮膚科学教室の主任教授を拝命し、様々なことに悩みながらも有意義な日々を過ごしております。今回、大好きな母校にむけて寄稿する機会をいただき、とても嬉しく、心より感謝申し上げます。 私は、卒後は地元に戻り、横浜市立大学での初期臨床研修を終え、同大学の皮膚科学教室(当時教授 池澤善郎先生)に入局しました。臨床の経験を積む中で、有効な治療に乏しい難治性自己免疫疾患に興味を覚えて大学院へ進学し、慶應義塾大学リサーチパーク・リウマチ内科 桑名正隆先生(現・日本医科大学大学院アレルギー膠原病内科学 大学院教授)の研究室に国内留学の機会を得ました。目から鱗の刺激的な毎日で、Physician Scientistとしてこうありたい、という魅力を存分に学んだ3年間でした。抗リン脂質抗体症候群におけるT細胞活性化維持機構の解析で学位を取得しましたが、その他、一番力を注いだ全身性強皮症の単球に焦点をあてた研究は現在も継続のテーマとなっています。学位取得後は、米国ピッツバーグ大学に渡り、Carol Feghali-Bostwick PhD(現・サウスカロライナ医科大学教授)の研究室で線維化病態研究を継続し、抗線維化ペプチドを発見して特許を取得するなどの貴重な経験もしました。平成22(2010)年に帰国後は、横浜市立大学に戻り、当時主任教授でいらした相原道子先生(現・学長)のご指導のもと、膠原病、乾癬、薬疹領域を中心に臨床と研究の研鑽を積み、また研究室の発展と若手育成に尽力し、現在に至ります。思い返しても、常に上司・同僚・後輩に恵まれていたことを実感しています。歴史ある教室を任されたことに重責を感じていますが、これから皆とどのように発展させていこうか、とワクワクもしています。 皮膚科学はとてもダイナミックで奥深い学問です。主に“視診”“触診”で診断し、病理でその診断を確実に、さらに病態のヒントを探ります。皮膚から得た情報から全身性疾患を見つけ出します。皮膚は日常的に外界と接し、人体防御、免疫反応の中心の場です。皮膚からみる研究のアプローチは数々の疾患の病態解明から新規治療法の開発につながっています。私の専門である膠原病や乾癬は、診療科横断領域ですので、日頃より多くの診療科の先生方に大変お世話になっています。私自身、内科学教室への国内外の留学を経た経緯から、皮膚科医としてこれらの領域に携わるのであれば、より総合的に病態をとらえる必要性を実感し、臨床や研究に携わってきました。その中で、この領域で皮膚科医が関わる重要性をより実感するようになっています。強皮症やエリテマトーデスなどの慢性難治性免疫疾患では、早期診断、早期治療、進展予防が患者予後の改善に重要と考えられる時代です。皮膚症状が先行する疾患が多いので、皮疹の正確な判断はもちろんのこと、疾患の全体像を考慮した診療や研究、適切な診療科連携は、さらなる飛躍的な発展を生み出すと考えます。既存の考え方に縛られることなく、多くの先生方とともに、より発展的に挑戦していければと願っています。 最近、コロナ禍の制限された大学生生活を送っている娘を見ていると、自分の大学時代を懐かしく思い出しています。学会や講演であちこちに行きますが、どこでも浜松医科大学の卒業生というだけで、諸先輩方に温かい声をかけていただき、また卒業生を見つけると声をかけたくなります。部活動に明け暮れた学生時代に過ごした仲間との多くの時間、自由で快活な大学の雰囲気がそうさせるのかもしれません。今後は、浜松医科大学の卒業生として、皮膚科学の発展のみならず、教育にもより尽力していきたいと思っております。引き続きご指導のほど宜しくお願い致します。医学科21期生(平成12年3月卒業)山口 由衣17NEWSLETTER皮膚科の奥深さ

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