浜松医科大学 NEWSLETTER 2023.3(Vol.49 No.2)
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3NEWSLETTERBreaking Research可能になりました。これまで我々は、■-GONAD法を用いて、35遺伝子、50系統を超えるヒト疾患モデルマウスおよびラットを作製し、ヒト疾患原因遺伝子の病態解析を行ってきました(Takabayashi, 2018, Aoto, 2021, Mutoh, 2022)。i-GONAD法によるヒト疾患原因遺伝子の発現を確認できるマウス図1(上段)ICRマウスの背中を切開して、卵巣、卵管を取り出す。(下段左図)卵管膨大部へゲノム編集試薬を注入し、3分間待つ。(下段右図)電気■孔法により受精卵への遺伝子導入を行う。論文1図2(A)ヒト疾患標的タンパク質CaMKIIαのFlagタグ挿入後の構造予想。(B、C)タグを挿入したマウスでのFlag-CaMKIIαとFlag-CaMKIIβタンパク質の脳のウェスタンブロット(B)、免疫染色(C)による発現解析。論文2i-GONAD法の改良ヒト疾患モデルマウスの病態解析<研究の概要> 本学医化学講座(青戸一司助教・武藤弘樹助教・Islam Mr. Monirul大学院生・才津浩智教授)、医用動物資源支援部(髙林秀次准教授)らの研究グループは、てんかんをはじめとしたヒト疾患の発症機序を解明するために、CRISPR-Cas9ゲノム編集法とエレクトロポレーション法を組み合わせたマウス作製法(■-GONAD法)の改良(図1)、タンパク質構造予想ツールであるAlphaFold2(DeepMind社)を用いてエピトープタグの付加する位置の評価法の開発(図2)、ヒト疾患と同様の変異をもったモデルマウスの作製と解析による病態解析(図3)を行いました。今回の一連の研究開発により、今後ヒト疾患モデルマウスを用いたヒト疾患の発症機序の究明を加速させることが期待されます。これらの成果は4報の国際学術誌に公表されました。<研究の背景> 令和2(2020)年にノーベル化学賞を受賞したゲノム編集法であるCRISPR-Cas9の登場により、容易に変異マウス作製が<研究の成果> ■-GONAD法を改良することによって(論文1)、これまでの夕方4−6時に関係なくヒト疾患モデルマウスの作製が可能になりました(図1)。 以前知的障害と発達遅滞を呈する患者においてII型カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質リン酸化酵素(CaMKIIα、CaMKIIβ)のde novo変異、早期発症てんかん性脳症の患者から小胞体シャペロンをコードするCNPY3の劣性変異を同定しました(Akita*, Aoto*, 2018、Mutoh, 2018)。今回■■■■■■α、■■■■■■β遺伝子に対して、Flag (DYKDDDDK)タグの挿入マウス(■■■■■■α■-■■■■、■■■■■■β■-■■■■、論文2)、ヒト疾患と同じ変異を持つマウス(■■■■■■β■■■■■、論文3)、■■■■■<論文>1) Takabayashi, Int. J Mol Sci. 20222) Aoto, Int. J Mol Sci. 20223) Mutoh, J. Neurosci. Res. 20224) Islam, J. Neurosci. Methods, 2023図3(A)オープンフィールドテストによる■■■■■■βP213L変異マウスの行動異常。小脳での免疫染色(B)とウェスタンブロット(C)によるCaMKIIβ タンパク質の発現低下。論文3<今後の展開> 一連の研究成果は、ヒト疾患モデルマウスの作製とその病態解明に貢献し、ゲノム編集で作製した疾患モデルマウスは効果的な治療法の開発に寄与することが期待されます。遺伝子に対して、2xHAタグの挿入マウス(■■■■■■■■■、論文4)を作製しました。 Flag (DYKDDDDK)やHAに対する市販の抗体で免疫組織染色による、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法が行え、特異抗体が存在しない場合の機能、発現解析に有用です(図2B、C)。また、■■■■■■β■■■■■マウスは、1つのタンパク異常によって、行動、発現異常を明らかにできました(図3)。医化学講座研究最前線i-GONADゲノム編集法の開発と、ヒト疾患モデルマウスの作製と解析

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