浜松医科大学 NEWSLETTER 2023.3(Vol.49 No.2)
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こちらから本学オンデマンドでWEB受講できます。本学では毎年、一般の方を対象とした公開講座を開催しています。しました。その中から1講義をピックアップしてご紹介します。▲ 表1ロコモチェック▲ 図1要介護または要支援の主な原因▲ 図2変形性膝関節症の頻度(厚生労働省: 平成28年国民生活基礎調査の概況)(2012年度 愛知県東栄町運動機器検診より) 人生100年が当たり前という時代がきています。ただ100歳まで長生きできたとしても、寝たきりなどの要介護状態が長く続くのはできるだけ避けたいところです。 要介護または要支援の主な原因として、関節疾患、骨折・転倒・脊髄損傷など、運動器の疾患によるものが全体の1/4を占めています(図1)。このように運動器の障害によって移動機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム」略して「ロコモ」といいます。ロコモは、自分自身でチェックをしてメンテナンスをすることで予防することができます。7つのロコモチェックのうち、ひとつでも当てはまれば、ロコモの可能性が高くなります(表1)。 ロコモは運動器の障害の初期段階ですが、「フレイル」という状態はさらに障害の進行した状態で、高齢期で生理機能の予備力、ストレスに対する抵抗力の低下により、障害、入院、施設入所、死亡などに陥りやすい脆弱性の亢進した状態と定義されます。 ロコモに関わる運動器疾患の一つに骨粗鬆症があります。骨粗鬆症は「骨の脆弱性が増大し、骨折しやすくなった状態」と定義されますが、日本全国で患者数が1,280万人と推定され、その中で実際に診断・治療されている患者さんは200万人程度で、残りの1,000万人超は「かくれ骨粗鬆症」と言われています。骨折前は健康で身の回りのことがなんでもできたご高齢の方が、骨粗鬆症が原因で骨がもろくなって一旦骨折をきたすと要介護になって生活の質が一気に低下してしまいます。 骨粗鬆症のこわいところは、骨折の危険性が高くなった状態でもまったく自覚症状がないことです。骨粗鬆症による骨折を予防するためには、骨粗鬆症の危険性をどれだけもっているかをよく理解し、その程度にあわせて積極的に予防・治療をしていくことが大切です。特にカルシウムとビタミンDが充足していることが骨粗鬆症の予防や治療を行っていく上での基本になります。 また加齢とともに進行していく関節疾患のひとつに「変形性関節症」があります。特に膝関節に起こる変形性膝関節症は加齢とともに増加し、特に女性では80歳以上になると9割近い方が単純X線上で変形性膝関節症の所見があることがわかっています(図2)。この中で、実際に症状を有する方は1/3程度ですが、こういった運動器の疾患は自覚症状なく進行していくことがあります。 そこで、本学医学部附属病院整形外科では潜在的な運動器疾患を積極的に見つけて治療介入していくことを目的とし、愛知県の東栄町という人口3,000人程度の小さな町で平成24(2012)年度から運動器検診を行ってきました。この取り組みにより、早期に運動器疾患を見つけて予防や治療介入することにより、健康寿命の延伸に寄与できると考えています。 超高齢社会においては、ロコモと認知症の予防が大切であり、そのためには運動が有効です。運動は骨に刺激を与えて強い骨を作り、筋力・バランス感覚を養って転倒しにくくすること、さらには脳に刺激を与えて認知症の予防にもつながります。人生100年の時代を健康で過ごすためには、運動器の疾患をよく理解して、正しい予防法、治療法を実践すべきです。整形外科 病院教授星野 裕信NEWSLETTER4健康寿命を延ばすための運動器のチェックとメンテナンス公開講座ズームイン今年度は「健康寿命を延ばすために知ってほしいこと」をテーマに2講義を実施

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