浜松医科大学 NEWSLETTER 2023.10(Vol.50 No.1)
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sweN inmulA▲ NHK『クローズアップ現代』にゲスト出演し、コロナ罹患後症状に関する 最新の研究結果を紹介する筆者▲ 重症COVID-19患者の集中治療にあたる筆者(左)▲ ネブラスカ大学医療センターを 視察訪問した筆者(左から4番目)▲ 世界保健機関(WHO)の短期専門家として ポートモレスビー総合病院(パプアニューギニア)で 院内感染ラウンドを実施する筆者(左) 平成17(2005)年に医学科を卒業しました森岡慎一郎と申します。この度、基礎配属でお世話になりました浜松医科大学医生理学講座の鈴木優子先生よりご推薦いただき、筆を執りました。卒後は浜松医科大学医学部附属病院のプログラムで初期臨床研修を行い、静岡がんセンター感染症内科や在沖縄米国海軍病院日本人インターンなどを経て、平成29(2017)年より国立国際医療研究センター国際感染症センターで勤務(医療教育部門 副部門長を兼任)しております。当センターでは、新興再興感染症対策を担当しています。新型コロナウイルス感染症対応は、令和2(2020)年1月の武漢チャーター便帰国者や2月のダイアモンドプリンセス号対応から始まり、現在に至るまで継続的に対応しています。具体的には、院内での現場診療チームの取りまとめ、新たな知見を論文として発信、新宿区保健所、東京都、厚生労働省などの行政と連携し、政策や診療指針策定にかかわりました。特に、東京iCDCタスクフォースや新型コロナウイルス感染症の手引き編集委員会(厚労省研究班)の委員として、コロナ罹患後症状に関する専門家会議参加、講演、啓発資材作成などの情報発信を行いました。これらは国内外のメディアで紹介され、令和5(2023)年7月には小池百合子東京都知事より感謝状を授与されました。現在は新型コロナウイルス感染症対応を振り返り、特定感染症指定医療機関として未知の感染症にも迅速かつ適切に対応できるよう、行政機関とともに準備を進めています。 近年はエムポックス(サル痘)、エボラウイルス病、ラッサ熱などの新興再興感染症も散発的に発生しています。これらに対する治療・予防のため、昨年度は研究責任者として6つの特定臨床研究を立ち上げ、本邦の感染症危機管理体制の構築に貢献しました。また、令和4(2022)年10月には全米の感染症危機管理を統括しているネブラスカ大学医療センターのBiocontainment Unitを視察し、お互いの経験を共有し、よきパートナーとして診療、訓練、教育、研究面で協力する方針となりました。同医療センターは令和2(2020)年6月より浜松医科大学と学術交流協定を締結しており、不思議な縁を感じました。 当センターはWHO Collaborating Centerであり、西環太平洋地域の感染対策の底上げも重要なミッションです。例えば、私は世界保健機関(WHO)短期専門家として2回パプアニューギニア国に派遣され、現地の医療機関を視察し、感染対策に関する助言や教育的トレーニングを行いました。また、その課題や問題点を整理し、中長期的解決案として提示しました。医療資源が充足しない中での地に足の着いた提案が同国保健省に認められたのか、その案は同国のNational Infection Prevention and Control Policy, 2021-2031に反映されました。私は16年間を静岡県で過ごしましたが、その時の繋がりで今があります。初期研修1年目を過ごした静岡赤十字病院には、外部講師として当時静岡がんセンターの大曲貴夫先生が定期的に講義に来て下さいました。現在の私のボスです。また、浜松で研修医時代を共に過ごした稲垣剛志医師とは、現在当センターで医療教育部門や入院診療チームを一緒に運営しています。私は卒後4年目にがんを患い闘病生活をしていましたが、浜松医科大学の多くの仲間や先輩方に支えられました。夜はひとりにならない方がいいからと、同学小児科の友人が何度も自宅に泊めてくれ、そのことで精神的にもずいぶんと救われたのを思い出します。今後もひととの繋がりを大切にし、日本の感染対策・感染症診療を世界の手本にするという目標に向かって綿密に計画を立て、毎日少しずつ努力してまいります。医学科26期生(平成17年3月卒業)森岡 慎一郎25NEWSLETTER日本の感染対策・感染症診療を世界の手本にする

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