浜松医科大学 NEWSLETTER 2023.10(Vol.50 No.1)
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5NEWSLETTERayneK▲▲▲▲ 教育施設に通う子どもたちと一緒に撮ってもらった写真です。対面授業の様子です。すべての発言や質問に積極的に答えてくれます。Zoomでのオンライン授業を受けてくれていたクラスの子どもたちと、対面での再会です。メンバーが子どもたちに紛れて写っています。授業が終わり、先生チームへの質問を考えてくれている様子です。質問のほかにも、感想やメッセージ、絵を描いてくれる子どもたちもいました。「ケニア」と聞いて、皆さんの心にはどのような情景が浮かぶでしょうか。ゾウやライオンが生息する荒野、先住民が自給自足で生活する原始的な住居、貧困に苦しむスラム街の人々…。今回私は、そんな未知の世界に足を踏み入れる貴重な体験をしてきました。 私は医学科3年次自由選択科目の国際サービスラーニングの一環として、令和5(2023)年の3月にケニアへ渡航しました。国際サービスラーニングでは英語科のマイケル・ボイス先生から国際協力をする上で持つべき価値観や態度などを教わり、その学びを活かしてケニアの子どもたちにオンライン授業を行っていました。そんな1年の集大成として、子どもたちに対面で授業を行うため、また自分たちの知見を広げるために、ボイス先生、医師2人、医学科学生3人でケニアに向かいました。 日本からケニアまで飛行機を乗り継ぎ20時間、ナイロビ空港に到着しました。飛行機から一歩、アフリカの大地に踏み出したその瞬間から、気温や空気、匂い、音など五感で「異国」を感じました。日本の夏よりも蒸し暑く、たくさんの車が往来する広いコンクリート道路の脇には赤土が盛り上がり、砂埃が立ち込めます。日本の空港とはかけ離れた情景に不安を感じましたが、それ以上の高揚感と期待で満たされました。 約2週間の滞在期間中、いつもオンライン授業を行っているGrapesyard小中学校をはじめ、4つの教育施設を訪れました。どの教育施設の子どもたちも厚く私たちを歓迎してくれ、特に1番最初に訪問したGrapesyard小中学校の子どもたちは私たちのために劇や歌、ダンス、ポスターを準備して盛大なWelcomeCeremonyを開いてくれました。私たちの訪問をこんなにも喜んでくれるこの子たちのために、私たちができることはなんでもやろうという決意を改めて強く持ちました。 対面授業は「第二次性徴」「生理・妊娠」「性感染症」「家族計画・人生計画」の4つのテーマに沿って行いました。ケニアでは性に関する知識の不足、月経や妊娠に対する偏見や思い込みによって女の子たちが不登校になったり学校を辞めてしまったりするという現状があり、オンライン授業でも性教育をメインに教材を作っています。対面授業に向けオンライン授業の教材を改変し、黒板やジェスチャーを使ってより強くメッセージを伝えられるように何度も打ち合わせを重ねて準備しましたが、実際は予定通りにいかないことやうまく伝えられないことが多くありました。日本の小学校よりも1クラスの人数は多く、対して教室は狭くて机は小さいです。それでも子どもたちは全員、「学びたい」という強い意欲を持って私たちの問いかけに体と声で答えてくれます。その熱意に応えなければならないという強い気持ちで、私たちの授業も私たち自身も成長していきました。毎晩遅くまでホテルの一室に集まって1日の反省と改善策を考え、回数を重ねるごとにより良い授業を作り上げることができたと思います。この2週間で得たものはここではとても書ききれません。子どもたちが持つ大きな夢、その実現を難しくしている生活の実態、さらにその現状に対して人々が実際どう感じているのか、直接目で見て言葉を交わして理解しようとする葛藤は、日本からアフリカを見ただけではわからないものでした。今回の渡航をサポートしてくださった方々、歓迎してくださったケニアの方々に感謝しつつ、本当の「国際協力」「国際支援」の意味を考え続けていきたいと思います。医学部医学科4年 清水 彩加Letters from Kenya

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