TAKIMOTO Ayaka京都大学文学部卒業日本学術振興会特別研究員DC1 京都大学博士(文学)京都大学日本学術振興会特別研究員PD 東京大学北海道大学大学院文学研究科准教授改組により北海道大学大学院文学研究院准教授(現在に至る)2015年2019年40行動科学研究室 皆さんは「動物は何を感じ、考えているのだろう」と不思議に思ったことはないですか。私の場合、大学で馬術部に入部し、毎日ウマと一緒に過ごす中で、そんな疑問が自然と湧いてきました。それが動物の心理学の世界に足を踏み入れたきっかけでした。 私が研究してきたウマやフサオマキザルは、仲間とかかわり合いながら暮らす動物です。ウマはまた私たち人間と古くからともに暮らし、親密な関係性を築き上げてきました。私は、彼らが他者とかかわり合いながら育んできたこころを観察・実験によって調べ、その進化の道筋を探っています。 ただ、動物のこころを理解するというのはなかなか大変な作業です。動物の行動は見ればわかりますが、こころは中をのぞくことも「どう思っているの?」と尋ねて聞き出すこともできないからです。言葉に頼らずに動物のこころを明らかにするには、行動からそれを支えるこころを推測するしかありません。重要なのは観察力・想像力・発想力です。私たちはとにかく動物の行動をよく観察します。彼らの行動は実に多様で個性に富み、今でも日々驚かされるほどで、見ていて飽きません。興味深い行動を見つけたら、そのこころの中に思いを馳せ、例えば、「仲間の手助けをするのは見返りを期待しているからだろう」と仮説を立てます。その仮説を証明するために、観察・実験を通して客観的な証拠を集めます。その際、いかに「目に見えないこころを行動としてうまく引き出し、仮説以外の説明を排除できる洗練された方法」を考案できるかが研究者の腕の見せ所です。略歴2007年2009年2012年さまざまな動物のこころを調べて比較し、その動物らしさを明らかにしながら、こころがどのような道筋を経て進化してきたのかを探る研究、比較認知科学・動物心理学を専門としています。最近では特に、仲間と絆を築いたり、仲間を思いやったりするような「仲間とかかわるこころ」についての研究に力を入れています。静内研究牧場の初夏の様子。広大な草地でのびのびと暮らすウマのコミュニケーション行動を朝から日暮れまで観察している。フサオマキザルの食べ物の分配実験場面。右側の分配者は、左側の受け手に対して、大好きなピーナッツを与えるかどうかを決めることができる。受け手との関係性や場面を細かく変えてどんな要因が分配に影響するかを調べる。 動物たちのこころにはまだまだ謎が潜んでいます。名探偵になったつもりでその謎を一緒に解き明かしてみませんか。瀧本先生の研究テーマは何ですか?瀧本 彩加 准教授よく見て、感じて、考えて客観的かつ説得的な証拠を集めて、動物のこころを科学する。
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