北海道大学 法学部 2023
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 まず、AさんはBさんに対して、洋服を引き渡すように請求しました。しかし、Bさんは洋服を宅配便でAさん宛てに発送したと主張しています。実はBさんが依頼した宅配業者のCさんがミスで洋服をなくしてしまっていた場合、AさんはBさんに代金を返してほしいと請求する権利があるでしょうか。宅配業者としてCさんを選んだのがAさんだった場合はどうでしょうか。また、Bさんには洋服を送る義務があるのに、送る気がなくてウソをついていると思ったAさんは、どのようなルールにしたがって洋服を引き渡してもらう権利を実現する(=洋服を手に入れる)ことができるでしょうか。民事法は、人と人の間にどのような権利や義務があり得るのかについて、また、そのような権利や義務を実際に実現する方法について、いかなるルールを作っておくのが適切なのかを考える法分野です。 社会法は、民事法や公法に比べるとかなり遅れて登場した法分野です。対等な当事者関係にあることを前提としていては解決できない社会問題に対応するための法領域ということもできます。 多くの人は労働者として、企業で働きます。では、企業は労働者に長時間の就労を求めたり、企業の都合で一方的に労働者を解雇することができるでしょうか。解雇されたり、定年退職した場合の生活費はどのように確保されるのでしょうか。また生活に不可欠な商品やサービスを不当に高く買わなければならないとしたら、どうなるでしょうか。このように、社会法は日常生活に密接に関わる出来事を扱います。身近な“生活”という視点から社会・世界を分析検討する営みが、社会法の醍醐味といえます。 ここでは2つの考え方ができます。まず「XはあくまでもAを殺害しようとしたのであって、Bを殺害しようとしたわけではない、よって、Bが死亡したのは過失による犯罪で、過失致死ということになる」という見解です。これは、意図した結果と発生した結果とが具体的に符合していることを要求する考え方です。これに対して、「Xは人を一人殺そうとして人を殺しているではないか、結果的に無関係なBを殺してしまったが、Xが凶悪な殺人者であることにはかわりなく、故意の殺人罪が認められる」という見解です。この考え方では、意図した結果と発生した結果とが法的に同じものと評価できるかどうかを問題にします。このようにそれぞれ理論的に根拠付けられていますが、メリットもあり、デメリットもあります。とくに論理的帰結だけでなく社会の状況、行為者の状況、一般人の視点、これらを多角的に分析し、行為者に刑罰を科するかを検討するのが刑事法学です。民法/商法/民事訴訟法/国際私法/知的財産法労働法/社会保障法/経済法刑法/刑事訴訟法/刑事政策民事法の科目社会法の科目刑事法の科目05民事法は、人々の関係を規律する法を学びます。フリーマーケット・アプリを使っているAさんは、出品者のBさんから洋服を安く譲ってもらえることになり、代金をBさんの銀行口座に振り込んだ。しかし、約束の日を過ぎても、その洋服はAさんの手元に届かない。Aさんはどうすればよいだろうか?労働者、高齢者、あるいは消費者に焦点をあてた法を学びます。①アルバイト先で残業したのに賃金が支払われない。どうすればいいだろうか。②国民年金の案内が来た。保険料は払わなければならないのだろうか。③A社のBというゲームソフトは、どの店でも同じ値段だ。おかしくないだろうか。刑事法学は「犯罪」と「刑罰」に関する学問です。Xは敵対するAを殺害しようと思い、歩いてくるAに対してピストルの引き金を引いたが、弾は外れて、並んで歩いていたBに命中し、Bが死亡した。Xはどのような罪責を負うか?民事法社会法刑事法法学部で学ぶこと

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