北海道大学 法学部 2023
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 現代では、国家権力をどう捉え、いかに規律するかということは大きな課題です。法学部では、国家と市民の関係を扱う憲法と行政法、国家間の関係を扱う国際法を学び、これに迫ります。憲法は、国家の最高法規であり、国家の権力を縛ります。行政法は、とくに行政権に着目し、行政と市民の関係にかかわる法律群をカバーします。国際法は、他国との関係で国家権力を制約します。Aさんの例では、憲法の観点からは幸福追求権や外国人の人権保障、行政法では、たとえば出入国管理法の下で外国人の退去強制を決める法務大臣の裁量の範囲など、国際法では、社会権規約(家族の保護)、自由権規約(同)、子どもの権利条約(子どもの利益の優先、父母からの分離の禁止)の適用などについて、議論されます。 政治学は、エネルギー、食糧、資金、軍事力など様々な資源の配分をめぐる対立がなぜ起こり、それをいかに克服するかを探究する学問です。世界や国内の政治問題が日々報道される中、現状を理解し、将来を左右するシグナルを見抜く眼力を養うには、単に情報を積み上げるだけでは十分とはいえません。歴史や思想を学び、その基盤の上に現象を分析的に見るための視角を身につけることによって、今日の世界と日本が抱えるさまざまな問題への処方箋を描き、法律や政策に組み上げていくことが可能となります。 政治学は過去と未来とを結ぶタイムトラベラーであり、そこに時間を超えた探究の醍醐味が存在します。 社会における人間の活動は政治、経済、文化など多岐に亘り、法はそのすみずみまで関わって、私たちの生活を支え、保障しています。法律ばかりでなく、慣習や社会通念、公共道徳などもそこには働き、その担い手も法曹のみならず、政府や企業、市民団体、法学者、そして法学を学ぶ皆さんや一般市民とさまざまです。個人の自由と人々の平等は近代以来の法の基本価値であり、法はその実現のために組み立てられ、運用されるべきものです。しかし、自由と平等は相反することもあり、それをどう調整するか、法はその解決の試みの積み重ねと言えるでしょう。そして、そこには法の歴史があり、またさまざまな社会で異なる法が組み立てられて、人々の権利や利益が守られているのです。このように、思想、社会、歴史、比較などの幅広い視野から法そのものの意義と価値を考えるのが基礎法学です。憲法/行政法/国際法政治学/行政学/国際政治/政治史/政治思想史法哲学/法社会学/法史学/比較法/法と経済学公法の科目政治学の科目基礎法学の科目 法学部で学ぶことは、ルールを知り、それをどう使うかだけではありません。今あるルールを疑い、新たなルールを造ることも必要です。よりよい社会の実現のためにどんなルールが必要かを考えるには、社会の状況を知り、政治学、社会学、哲学・思想、歴史などの知見を総動員することが求められます。法学部の授業は大きく6つの分野に分かれています。 どんなことを勉強できるのか、少しのぞいてみましょう。06国家権力と法̶憲法、行政法、国際法を学びながら考えます。Aさんは、日本の公立高校で成績抜群の2年生(17歳)。外国籍の両親から日本で生まれ、外国へ行ったことはない。両親は、就労ビザが切れた後も日本で働いていた。一家は不正規滞在を理由に、両親の本国に強制送還されそうである。Aさんは北大法学部に進学したい。日本に残ることができるか?政治学は、法、制度、政策の創造を学びます。政権交代や政策転換など、政治の変化はなぜ起こるのか。超高齢化、グローバル化、気候変動問題の拡大の中で、我々の未来はどうなるのか。従来の国際秩序が揺らぐ中、世界はいかに変化するのか。自由、格差とは何か。こうした多岐にわたる問いに対し、政治を学ぶことがどう役立つのか。法そのものの意義や価値を学びます。私たちを取り巻いている近代以来の法制度は、何を目的とし、どのように組み立てられて来たのか? 人々の自由や平等は、どのように保障されているか? 人々はそれをどう活かしているか? その保障は近代以前の時からどのように変化したのか?そしてさまざまな社会に応じてどう異なるのか?公法政治学基礎法学

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