久保淳司准教授今日の会計でもっとも重要な問題は時価に関わる問題です。会計における時価とは、「測定日に市場参加者間での 秩序ある取引が行われた場合に資産の売却によって受け取るであろう価格または負債の移転のために支払うであろう価格」という厳めしい専門用語です。このような厳密に定義された時価を使って企業情報を表現すると、環境修復義務、潜在的損害賠償義務、税務リスクといった企業の「隠れリスク」を露わにすることが可能になり、一般公衆にとってより有益な企業情報になります。他方、企業サイドからは、時価情報の所為で純資産や利益延いては配当や株価の変動性が高まり、銀行や保険会社を中心に多くの企業の業績に苛酷な影響が及ぶと喧伝されてもいます。時価情報の利用への社会的影響は大きいため、「良薬は口に苦し」ではすまされない問題は解決していかなければなりません。真っ先に思い浮かぶ問題として、「リスク」は見積もりによって時価を算定するため、企業情報が恣意的に操作できるのではないかという信憑性に関わる問題があります。より専門的な問題には「時価評価のパラドクス」という問題があります。これは「リスク」の時価を算定する際に、企業の信用度を反映すると、信用度の低下によって利益が生じてしまうという直感に反する事態が起きてしまう問題です。これらの他にも時価に関わる問題はたくさんあります。それらの問題への実行可能な解決策の処方は困難なのですが、やり遂げなければなりません。会計は単なる金勘定ではなく、公平・公正な経済社会を作り上げるインフラだからです。長させると指摘されています。しかし、同じ経験をしても、成長する人としない人がいますが、なぜこのような違いがあるのでしょうか。それは、経験から学ぶ力の違いです。経験から学ぶ力には、高い目標にチャレンジする力(ストレッチ力)、自分の経験を振り返り学びを引き出す力(リフレクション力)、仕事の中にやりがいや喜びを感じ取る力(エンジョイメント力)という三つの力があります。これらの力を持つ人は、日々の経験を通して成長することができるのです。逆に、できることしかしない人、仕事をやりっぱなしにして振り返らない人、仕事に意義を感じられない人は、なかなか成長できません。なお、成長している企業では、「ストレッチ、リフレクション、エンジョイメント」という三つの要素を刺激することで、人材を育成しています。皆さんも、経済学部の学びを通して、経験から学ぶ力を身につけてください。会計認識に挑むリスク●会計基準論22プロフィール東京都出身。1988年小樽商科大学商学部卒業。ランカスター大学(英国)博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning) 。神戸大学経営学大学院教授を経て、2013年から現職。主な著書に『成長する管理職』(東洋経済新報社)、『経験からの学習:プロフェッショナルへの成長プロセス』(同文舘出版)、『経験学習入門』(ダイヤモンド社)など。プロフィール札幌市出身。1995年北海道大学経済学部卒業。2000年同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。同年北海道大学大学院経済学研究科講師、2002年より現職。著書に『1株当り利益会計基準の研究』(同文舘)など。ブルックナーのシンフォニーが流れる資料が山積みされた研究室にいます。
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