岡田美弥子准教授大学院へ入学して研究テーマを決める時に、指導教官が三つのヒントをくれました。①今後、重要になっていくテーマであること。②誰も手をつけていない未開拓のテーマであること。③自分が興味をもち続けていけること。これらのヒントをもとに決まったのは、国内外の「ドラえもん」ビジネスの研究。さぁ、これから研究のスタートです。誰も手をつけていない研究には、問題が待ち受けていました。文献がありません。そこで、マニア向けの一般書や雑誌を集めて、マンガビジネスの輪郭を探りました。そのおかげで私の研究室には、オタクに負けないくらい、マンガ関連の本があります。次は調査です。先行研究がありませんから、現場のお話を聞きに行くことから始めなければなりません。コミック雑誌の編集部やアニメプロダクション、映画会社、玩具メーカーなど、マンガに関わる企業の方々にインタビューをしました。研究で一番楽しいのは、インタビュー調査です。元来、人と話すことが好きですし、クリエイティブな世界で働く人々のお話には、ワクワクさせられます。時には、有名なマンガ家の先生にお会いできたり、テレビ局でアニメのセル画をいただくという役得もありました。いよいよ調査結果を論文にまとめる段階です。未開拓分野の研究は、道路標識のない道を歩くようなものです。勘を頼りに進んでみて、間違った道だと気づいたら、もう一度違うルートを探さなければなりません。こんなことを繰り返しながら、研究を進めてきました。「マンガの研究って楽しそうでいいよね」。多くの人はそう言いますが、身近な現象だからといって、それを解明することが容易だとは限りません。確かに、ある程度知っていることだから、入りやすいテーマではありますが、実際に研究してみると、既存の経営学の理論では説明できないことがたくさんあります。マンガビジネスって本当に奥深いものです。現在は、視野を少し広げて、エンターテイメントビジネスというテーマで研究をしています。もちろん、今後もマンガビジネスの研究は続けていきますが、今は芸能プロダクションの調査をしています。そのうち「ジャニーズ事務所」にも、調査に行きたいと思っています。運が良ければ、嵐や関ジャニ∞に会えるかもしれませんね。マンガビジネス← ← 6 プロフィール1995年北九州市立大学経済学部卒業。2000年神戸大学大学院経営●国際経営論学研究科博士課程修了。神戸大学博士(経営学)。北海道大学大学院経済学研究科講師を経て、2003年より現職。主要業績は「マンガビジネスの成長」。かなりミスマッチに感じられるからでしょう。難しくて堅苦しいイメージの研究と、とっても身近な娯楽であるマンガが、どう結びつくの? まずは、この研究テーマとの出会いから話しましょう。研究テーマは「マンガビジネス」です。このひと言で、ほとんどの人が私の研究に興味をもってくれます。「研究」と「マンガ」という言葉の組み合わせが、
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