地域社会に深く入り込み、途上国の抱える課題にアプローチ経済学的な視点から問題を設定・分析し、ゼミでの議論を通してさらに研究を深めていきます。最後に卒業論文として研究成果を発表します。残念ながら、こうして身に付けた経済学皆さんは「開発途上国」と聞くと、一体何を連想するでしょうか? 争、感染症といった問題群でしょうか?屈託のない子供の笑顔やバックパッカーを連想し、わくわくする人もいるかもしれません。開発経済学は、アジアやアフリカの開発途上国に特有な経済事象を分析し、貧困撲滅や経済発展を可能とするための処方箋を見つけることを目的とした学問領域です。分析対象として扱う範囲は、国家の政策や国際貿易などマクロの面から、村落共同体や親族集団のあり方などミクロの面まで、非常に幅広いものがあります。開発経済学は、途上国の抱える様々な課題の解決に、果敢に取り組む冒険的な学問です。経済学の先端研究の成果を総動員するばかりでなく、文化人類学、社会学、地域研究などの隣接学問領域の知見を取り込むことも厭いません。そして、なんといっても開発経済学の醍醐味は、異国の地でのフィールドワークでしょう。途上国において何が本当の問題であるのかを見極め、その解決策を見出すためには、現地の人々の暮らしぶりや考え方、地域に根付いた在来資源などをよく知っておく必要があります。そのため、現地調査では、地域社会に深く入貧困、格差、紛的思考が日常生活において直接役立つことはあまりないでしょう。しかし、経済学は、それを学ばなかった場合に比べてより広い視野を与えてくれるはずです。プレゼンテーションや論文執筆で得たノウハウもときり込み、住民と密接に関わり合いながら研究を進めていきます。ときには農村に何ヶ月も滞在して人類学者のような調査を行います。樋渡ゼミでは、通常、英語の文献を輪読します。海外の事情を扱った研究をするわけですから、外国語の習得は不可欠です。また、フィールドワークも奨励しています。夏期休暇に、樋渡が調査地としているウズベキスタンの農村を訪れたゼミ生達には、には役立つかもしれません。そして何より、「経済学の素養を身に付ける」という目標に向かって仲間と切磋琢磨したゼミでの経験は、その後の社会生活において大きな財産となるでしょう。モスクやバザールの見学、農村生活の視察、インタビュー調査の実習などをする機会を与えてきました。村落で催される結婚式に飛び入り参加し、大勢の村民にもみくちゃにされながら、ウズベク・ダンスを散々踊らされたゼミ生達の中には、人生観が変わってしまった人もいるかもしれませんね。しかしこれも、村民との信頼関係を深め、フィールド調査をスムーズに進めるためには必要な一歩なのです。●●●8 プロフィール 沖縄県出身。2001年東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)。2009年より北海道大学大学院経済学研究科准教授。主著に『慣習経済と市場・開発−ウズベキスタンの共同体にみる機能と構造』。ゼミ生から一言熊本 有希北海道・札幌東高校卒業 樋渡ゼミでの経験が将来を左右したといっても過言ではないほど、この2年間にゼミで学んできたことが私を大きく変えてくれました。 何よりも影響を受けたのは3年生の夏休みに行ったウズベキスタンへの研修旅行です。日本とは全く異なる文化や生活を自分の目で見て、現地の人々と交流したことで、将来は世界をフィールドに活躍できる仕事に就きたいと思うようになりました。また、そのような仕事には語学力が不可欠ですが、毎週の英語文献の輪読のおかげで次第に向上してきた英語力が支えとなりました。 課題には真剣に取り組み、遊ぶときは思いっきり遊ぶこのゼミだからこそ得られた経験を今後に生かしていきたいです。樋渡ゼミ開発経済学樋渡 雅人 准教授
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