TANIMOTO Akihisa学習院大学文学部卒業同大学大学院人文科学研究科博士後期課程中退同大学文学部助手北海道教育大学岩見沢校助教授同大学札幌校准教授2000年2007年日本史学研究室 「日本史」という枠組みは、高校の科目にもありますから、皆さんにとって馴染みが深い分野でしょう。高校で「日本史」を履修しなかった方でも、小学校・中学校の「歴史」の授業で、日本史に関する内容は必ず学習したはずですよね。 いま、「学習」という言葉を使いましたが、大学で学ぶ日本史は、決められた教科書をきっちり覚える学習とは、ちょっと違います。求められるのは、課題を自ら設定し、信頼のできるソース(史料)を専門的な手法で分析を行ない、客観的な論拠を提示し叙述する姿勢です。いわば、成果品を享受する「消費者」から、消費に耐える商品を供給する「生産者」への転換です。 私は現在、「近世蝦夷地在地社会の研究」を看板に、仕事を進めています。江戸時代の北海道・サハリン・千島列島に結ばれた社会の構造を、古文書を素材としながら日々分析を進めています。…とこう書くと、ローカルな郷土史研究だなあ、と思う方もあるかもしれません。ただ、世界中どこをみわたしても、社会史研究は、ローカルな事例を深く具体的に分析することから始まるものです。 江戸時代の北海道を例にとると、そこには、アイヌ語を母語としアイヌ文化を自らの文化とした集団と、日本語を母語とし和風文化を自らの文化とした集団とが織りなした、独特の社会秩序が息づいていたことに気づきます。異文化に属する集団の存在を前提とした、相互に交流と軋轢とを抱えながらの社会が、つい150 年ほど前の北海道にはあったわけです。略歴1993年1998年サハリンや北海道の近世文書が所蔵されるロシア・サンクトペテルブルクの研究所にて。北海道の歴史を考えるには、国際的な共同研究も欠かせません。39近世日本(江戸時代)の社会史に取り組んでいます。とりわけ「蝦夷地」と呼ばれた北海道・千島列島・サハリンをフィールドとしていますから、主体的なアイヌ史の構築にも関心を向けています。素材は主に和文の古文書ですが、その所在は世界各地に及んでいるため、近年は海外との共同研究を進めています。2008年2018年2019年北海道大学大学院文学研究科准教授同教授改組により北海道大学大学院文学研究院教授(現在に至る)※現在、アイヌ・先住民研究センターならびにアイヌ シサ■ ウレ■パ ウコピ■カレ ウシ(アイヌ共生推進本部)の教員を兼務 異文化理解や民族紛争といえば、どこか遠い世界へ出かけて行かなければ直面できない課題と思われがちですが、このように、自らの足元を見つめ直すことで、考えをめぐらせていくこともできるわけです。もちろんそれは、北海道や日本の社会の抱える、アイヌの人びとをはじめとした方々との民族共生や和解のありかたの模索といった現代的課題へ、歴史学的にアプローチすることにも通じていきます。 このように、北海道の歴史には、大きな課題解決のヒントが豊かに含まれています。あなたも、地道に古文書を解読しつつ、「生産者」としてその鉱脈を探してみませんか?嵐山展望台にて。背景は旭川市街。道内各地での史料調査は、研究の基本です。谷本先生の研究テーマは何ですか?谷本 晃久 教授学問の「消費者」から「生産者」へ。自らの足元の歴史を掘り下げることから、みえてくる地平がある。
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