北海道大学 歯学部学部紹介 2024
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YTISREVINUODIAKKOH [部局間協定]提携年月日提 携 校1973.8.20アメリカ合衆国オレゴン州立大学歯学部国 名冬のヨーロッパに降り立ったのは実に7年ぶりだった。やっと帰ってこられたという気がした。私は北大の歯学部に入学する直前、関東の別の大学で、文系の学生としてフィンランドのセイナヨキという都市の大学に留学していた。その留学を契機に歯科医学を修めてみたいと北大に入り直すことを決意した、まさにその地からボスニア湾を挟んでちょうど向かいに位置するウメオ大学に留学する機会を得られるとは。まさに原点に帰ったような思いだった。スウェーデンの歯科大学の教育システムは日本のそれとは大きく異なり、臨床における実践をとても重視していた。私たち日本の歯学生が行う臨床実習では、できることの範囲が非常に限られている。基本的には教員の歯科医師の診療を後ろで見学し、ときに補助するのが原則だ。だから自力で虫歯の一本も治すことはないまま、歯科医師になってしまう。一方で、ウメオ大学では学生が自分自身の担当患者を受け持ち、診査診断し治療計画を立て、教員の指導と監督の下ではあるが、自分たちの手で治療を完遂する。そういった実地での臨床経験を早期から積み、たった5年で卒業してしまう。それを目の当たりにして、どうして自分たちはこうなれなかったのかと悔しかった。ただし、これを以て日本の歯科教育が悪いと断ずるのはアンフェアでもある。スウェーデンでは成人の歯科治療は公的医療保険の適用外で、日本と比べてはるかに高額である。ただし、歯学生による診療であれば治療費が大幅に割り引かれるため、「学生に治療されてもよい」という患者が十分に集まるというからくりだ。社会全体のしくみが大きく異なるからこそ実現できる教育であって、スウェーデンの歯科教育のしくみだけを日本に持ってくることは難しい。こうした社会制度や経済的な事情であれ、英語の得手不得手といった言語の問題であれ、隣の芝はいつでも青く見えた。たとえ真冬であっても。ひとたび留学をすれば、毎日が内と外、自己と他者の比較であり、悔しい思いもした。だがそれはまさに鏡であり、日本にいるのでは見えな1990.11.22大韓民国全北大学校歯科大学2000.6.5中華人民共和国ハルビン医科大学口腔医学院2001.1.29中華人民共和国中国医科大学口腔医学院2005.9.21中華人民共和国ハルビン医科大学第四臨床医学院2012.11.12デンマーク王国オーフス大学歯学部2015.4.20大韓民国江陵原州大学校歯科大学2015.8.25スウェーデン王国カロリンスカ研究所い、自分の強みや、可能性、本当になりたい自分像にもはじめて気づくことができる。そして何よりも、短い時間の中であっても心を通わせることができた、たくさんの友人たちとのつながりは、他にたとえようもないほどの貴重な財産だ。頭頸部の人体解剖実習に誘ってくれたDerin。国家試験を乗り越えた上で行うご遺体の解剖は大変勉強になった。最初に大学内の案内をしてくれ、街のゲームバーやホームパーティーにも誘ってくれたHelena,Jennelie,Julia,Mariaそして背が高く素敵なTilde。授業の合間によくいっしょにお昼を食べたMajda,Isabel,Rebecca,Anna,Adrian,Matteusはパーティーでまた違う一面を見ることもできた。唯一残念だったのはMajdaが既婚者だったこと。日本と全く勝手が違う歯内療法の実習では、一日いっしょになった、天使のようなLivが一からスウェーデン流を優しく教えてくれた。Thelmaとは歯学生のアルバイト事情について話し込んだ。バスで声をかけてよかった!フランスの大学から留学していたEraとAnouckとはお互いに母国の歯科教育事情をプレゼンし合った。学生が患者を持たないということに驚かれたっけ。学部外でもFreiya,Sven,Thushar,Mikoたちと手製のスシを片手に飲み明かしたことは忘れられない。Mikoは現在、東北大学に留学中。日本でもう一度会いたい。寒い中パーティー会場からいっしょに帰ったJennieはアニメが大好きだったし、Freiyaは難しい日本語も知っていて驚きだった。微睡み。木漏れ日。寮のルールや設備について教えてくれたAniekには、冷蔵庫のことで迷惑をかけっぱなしだったかもしれない。Hannesは医学生で忙しい中でもよくキッチンで話した。川島さんのとびひを診てもらったこともあった。スヌースがやめられないJonathanは、口腔がんになったらきっと連絡すると約束してくれた。そして我らがRundqvist兄弟!双子の兄のSimonは自分で醸造したワインを結局5ℓちかく振る舞ってくれたし、弟のBastianはスーパー面白いやつでいつも楽しませてくれた。たまたま深夜の路上で見かけた不審者が、なんと泥酔したBastian(現オレゴンヘルスサイエンス大学)(現全北大学校歯医学専門大学院)2016.6.13中華人民共和国山東大学口腔医学院2017.2.5ネパール連邦民主共和国カトマンズ大学歯学部2017.5.18中華人民共和国香港大学牙醫学院2018.2.27バングラデシュ人民共和国サッポロデンタルカレッジ湾台北医学大学口腔醫学院2018.10.9台2018.12.18台湾国立陽明交通大学牙醫学院2020.3.5ブラジル連邦共和国サンパウロ大学歯学部2020.3.23タイ王国マヒドン大学歯学部2021.3.25台湾国立成功大学醫學院2022.10.6ベルギー王国ルーヴェン大学提携年月日国 名だったときは笑ってしまった。二人のつながりで知り合ったEmelieはスウェーデンのお菓子をくれたし、Sofieはシャイでかわいかった。Bastianの友人のおかげで世界一臭い缶詰のシュールストレミングも試すことができた。魚に慣れている我々は意外と大丈夫だった・・・。いま、日々忙しさに追われる研修医の身になってあの留学を思い出すと、とても遠い日々であるかのように錯覚する。短い期間だったが、毎日が刺激的で、余すことなく身の回りすべてが学びだった。いまこの拙稿を読んでいるあなたにも、チャンスが訪れたときは、ほんの少しの勇気をだして留学に乗り出してみることを勧める。旅行では得られない、人生の糧をきっと得られるはずだ。とくに、私のように日本で生きづらさを感じる瞬間が多い人には、新しいみちが開けると思う。最後に、今回の留学を実現させてくださった、有馬先生、網塚先生をはじめとする北大の先生方、職員の方々、そしてウメオ大学の教授陣とくにSariとAnnaに深く感謝を申し上げます。そして愉快な旅の道連れ、川島カレンさんと星井香穂さん。思い出をありがとう。またいつか。提 携 校23ウメオ大学での日々を想う ────────────────────52期卒伊藤隆広姉妹校との交流国際交流留学報告

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