ニワトリの愛情表現の仕組みを解き明かす!▶設問1 先生の研究について教えてくれませんか? ▶設問2 先生が大学生のころ、研究者になりたいと思ったきっかけを教えてください ▶設問3 先生にとって茨城大学農学部って? 5大久保武 教授 家畜の中ではひときわ地味ですが(笑)、ニワトリの産卵や成長を制御する仕組みについて研究をしています。なかでも、卵を温めてヒナを孵化させる行動を支配しているプロラクチンというホルモンの働きに着目しています。このプロラクチンはヒトの子育てに関係しています。人間と鳥類とでは、種としてずいぶん離れていますが、よく似た働きを共通して持つので非常に興味深いです。また卵を温めているニワトリはほとんど餌を食べません。食欲より卵を大切にする行為に母ドリの強い愛情を感じます。最近ではホルモンによる食欲の制御についてもよく分かってきているので、なぜ母ドリは卵を温めているときには食べたいという欲求を抑えられるかという観点で、生殖と食欲との関連についても研究しています。 「研究」ということを意識するきっかけになったのは、高校入試の帰りに立ち寄った書店で買った1冊の本がきっかけです。その本では遺伝子複製の機構や遺伝子組み換え技術の概要が平易にまとめられており、遺伝子組換えで新しいモノを作ってみたいと思いました。高校へ入学して、そのことを担任の先生に伝えたところ、モノづくりならば農学部が良いとのアドバイスをもらい大学では農学部に進みました。学部時代は遺伝子組換えとは無縁の研究を行っていましたが、大学院では遺伝子組換え実験を他大学との共同研究で実施することになりました。共同研究相手の教授の先生に初めてお会いしたときに、「学者にならないか?」と言われ、「研究者という道もあるのだ」と思いましたが、現実感はまったくありませんでした。それでも、やりたかった研究ができることとなり、毎日ワクワクしながら生活していたことを思い出します。 茨城県は農業県ですので、農学の教育や研究を行うには最適な場所です。そのような環境の下で、教育研究ができることに魅力と幸せを感じています。研究を進めていくと、必ず「なぜ」という疑問に突き当たります。研究室では、この「なぜ」を解き明かすために考え、研究を行うことを日々繰り返しています。学生さんも、私も、研究がうまく行かなくて悩んだり、考えることに行き詰まったりと、様々な経験をしますが、それらの苦労の末に研究成果が得られた時の喜びはひとしおであり、それが研究の醍醐味です。そして、研究を通じて培った「考え抜く力」は、卒業して社会人になった時に非常に大きな武器になることでしょう。これから先も、この農学部で学生のみなさんと共に学び、考え、成長していきたいと考えています。教員紹介
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