茨城大学 農学部 2025
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農業を救う菌エンドファイト:つながることで見えること▶設問1 先生の研究について教えてくれませんか? ▶設問2 先生が大学生のころ、研究者になりたいと思ったきっかけを教えてください ▶設問3  先生にとって茨城大学農学部って? 6成澤才彦 教授 動物にとって腸内細菌の働きが欠かせないのと同様に、植物にとって微生物の働きは必要不可欠なものです。これら微生物の中で、エンドファイトと呼ばれる菌類が植物と共生しています。エンドファイトがうまく共生すると、植物の免疫力が向上したり、耐暑性を付与したり、逆に耐寒性を付与したりと、様々な効果をもたらすことが分かっています。さらに、土壌中には、たくさんの微生物のつながりがあり、エンドァイトがリーダー役を務めていることもわかってきました。今は、特に温暖化条件下での植物への耐暑性効果に焦点を当てています。耐暑性が付与できると、温暖化により気温上昇している地域でも作物の栽培ができるようになったり、通常の生育時期をずらして栽培することができるようになったりと、農業における生産性が一層高まることが期待されます。このような取り組みは始まったばかりですが、次世代の農業には、微生物が鍵となると確信しています。 元々育った家系が食を専門にしていたということもあり、食べること自体がずっと好きでした。おいしい食べ物はどのように作られているのかと考えた時に、美味しい素材(野菜など)を作るためには土壌の中の微生物の働きが欠かせないことに気付きました。どんなに優れた料理人でも、偽りの素材では、美味しい料理は作れませんし、良い素材であれば、そのままでも十分美味しいですしね。このように、自然に近い栽培環境で作物を栽培し、それらを人が摂取し、健康的な食生活を送れるようになるにはどのような解決策があるのかと考えていたことが、今思えば、「エンドファイト」をテーマに研究をはじめた動機であり、研究者になるきっかけでもありました。 微生物研究にも最適な場所です。私は菌学者ですが、周りには細菌、土壌、植物、そして人につながる良い研究者がいます。研究や教育を進める上では、協働が大切ですが、これを実現する環境としては最適です。特に最近、エンドファイトの性質をコントロールする細菌の存在を発見し、植物−エンドファイト−細菌の3者間でのつながりが注目されています。この発見も、もちろん1人では出来ないことでした。さらに、地理的にもつくばに近く、大学や国の研究機関との交流が容易なのも大きな利点です。茨城大学内では完結出来ない研究内容も、少し手を伸ばせば可能になる環境です。また、当研究室にも多くの留学生がいますが、インドネシアなどアジア地域との交流が盛んなのも良いことです。「地域」から「世界」を考えるのに最適な場所です。

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