岩手大学 理工学部
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私の研究室では、哺乳類や鳥類の生殖学研究や人工繁殖技術の開発に取り組んでいます。人は哺乳類であり、生命のはじまりという私たちにとって身近なテーマといえます。当研究室は動物繁殖に関するいくつかのプロジェクトを同時に進めていますが、その中でも精子のフリーズドライ保存、絶滅危惧動物の人工繁殖、ゲノム編集技術の開発を中心課題としています。フリーズドライ保存とは、凍結乾燥技術によって長期間保存する方法です。インスタントコーヒーを思い浮かべてみてください。お湯を注ぐことで、粉の状態からコーヒーに戻ります。この技術を動物の精子に用いて乾燥させることで、室温でも長期保存ができるようになります。そのため災害や停電が起きても安全に保存でき、将来的には宇宙にも運搬することが可能に。もしかすると「ノアの箱舟」の役目を果たすかもしれません。絶滅危惧動物の人工繁殖も、地球環境の変化によって多くの生物が絶滅の危険にさらされているだけに重要性の高い研究です。当研究室では独自に開発した生殖技術を用いて、動物園や研究機関と連携し、アマミノクロウサギやヤンバルクイナなどの絶滅危惧動物の保全を目的とした人工繁殖に取り組んでいます。ゲノム編集技術とは、生物の遺伝子を自在に改変することが可能な技術で、新聞等でも取り上げられる近年注目されている技術です。当研究室ではこの技術を用いて人の病気と同じような症状を示す動物を作製することで、医学・創薬研究の発展につなげています。これらの研究は、人と動物が現在抱えている問題の解決に大きく関係しています。人については少子化の原因でもあるヒト不妊症の原因解明や治療法の開発、医薬品開発に関する基礎研究に応用。動物は、絶滅の危機にさらされている動物の個体数の回復。さらに、既に絶滅してしまった動物についても、精子や卵子が保存されていれば、生殖技術を用いて現代によみがえらせることもできます。当研究室の取り組みは、医療から絶滅危惧動物の保全まで幅が広く、貢献度の高さが特徴です。動物繁殖に関する生物系の知識、そして特殊な専門機械を用いて人工繁殖技術を開発する工学系の知識、両方の知識を合わせることで新しい成果が生み出される、まさに理工学部にふさわしい研究を行っています。人々の暮らしや生活環境が充実した地球をつくるために、生命科学領域の研究者となって一緒に研究しましょう。顕微授精の様子生命の原点を研究し、人間と動物の未来を創造するねずみから精子と卵子を取り出し、顕微鏡を使って受精させる。ミリ単位で扱うだけに、手先の器用さや集中力が求められますProfile1974年生まれ。千葉県出身。近畿大学大学院生物理工学研究科修了。京都大学大学院医学研究科講師。ハワイ大学柳町隆造研究室留学。動物繁殖学に必要な高度な技術を習得し、独創的な発想でグローバルに活躍できる人材の育成を目指す。学生時代から打ち込んできた剣道は六段の資格を持つ。岩手大学剣道部の顧問としても活躍。金かね子こ武たけ人ひと准教授化学・生命理工学科 生命コース理工学専攻 生命科学コースFACULTY OF SCIENCE AND ENGINEERING16

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