岩手大学 理工学部
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私は電気エネルギーを時空間的に制御することで、新たな応用を生み出す研究を行っています。エネルギーの時空間制御とは、エネルギーを時間的に圧縮することで得られる大きな力のことで、パルスパワーと呼びます。このパルスパワーを電気エネルギーによって作り出し、環境保全や材料分野、最近では農業や食品分野など様々な応用を進めています。代表的な取り組みとして、キノコへのパルス電圧の活用があります。「雷が落ちるとキノコが生える」という言葉が、ギリシャ時代の本にも記録として残っています。雷によって菌糸が切れたり、温度が急激に変化すると、キノコはストレスを感じて子孫を残さなければと栄養生長から生殖生長へと移ることで発生します。キノコ以外の農業でも、電気をかけることで植物の発芽を早めたり、静電気でカビや雑菌を集めて腐食を抑えることで長期保存に利用されています。パルスパワーは瞬間のエネルギー(電力といいます)は大きいですが、平均的に使うエネルギーは小さなものです。エネルギー消費を抑えながら様々な応用、特に農業・食品分野への応用に展開することで、持続可能社会への貢献や暮らしを豊かにする手助けにつながります。実際に、静電気でキノコの収量を上げる技術は、タイの北部(チェンライ)などの所得の低い地区で使われ、所得の引き上げにつなげようと試みています。また、静電気を用いた食品保存も、食品劣化が激しい国や地域での活用が期待されています。このような電気の力、エネルギーや環境の大切さを次世代に知ってもらうために、私の研究室では毎年学生と一緒に小中高校での出前授業や、こども科学館や公民館等でのサイエンス教室などにも取り組んでいます。電気電子通信コースは、電気・電子・通信分野を世の中のシステム・通信、電子デバイス(計測・応用)、電気エネルギー(インフラ)の分野で支える研究や学問を展開しています。例えば狩猟、農業、工業、ITに続く社会として、Society5.0(ソサエティー5.0)が提唱されています。Society5.0とは、①頭脳としてのAI、②神経としての通信(IoT)、③筋肉としての出口(ロボット・医療・交通・エネルギーマネージメントなど)からなる未来社会です。この全てを網羅しているのが本コースであり、興味に応じて様々な学習・研究ができ、そのスキルを社会で生かせるのが魅力だと思います。雷とキノコの関係を人工的に再現。シイタケの菌床に電圧を加えると、それが刺激となって生殖生長に移りますパルスパワー技術の研究開発で暮らしを豊かにする手助けに学生たちが主体となって機械を慎重に操作。高木研究室では出前授業にも積極的に取り組んでおり、学生がそのサポートをしていますProfile1963年生まれ。福岡県出身。熊本大学大学院工学研究科修士課程修了。平成元年より大分工業高等専門学校電気工学科に、また平成8年より岩手大学工学部電気電子工学科に勤務。平成28年にはエネルギー教育の普及啓発の業績が評価され、科学技術分野・理解増進部門の文部科学大臣表彰に選ばれた。趣味は登山で、過去にはモンブランに登頂したことも。高たか木ぎ 浩こう一いち 教授システム創成工学科 電気電子通信コース理工学専攻 電気電子通信コース| 高校生のための研究紹介 | IWATE UNIVERSITY19

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