岩手大学 理工学部
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現在私は、同コースの船崎健一先生や谷口英夫先生と協力して、航空用ガスタービンエンジンの高性能化について研究しています。ガスタービンとは、燃料を燃やして動力を得るエンジンの一種です。吸い込んだ空気を「圧縮機」で圧縮、続く「燃焼機」で高圧の空気に燃料を噴射し燃焼、高温高圧になった気体がタービンを回転させ、その動力を回転力として取り出します。ガスタービンは小型で高出力が得られることから、航空機のエンジンや発電などにも使用されています。ガスタービンを構成する圧縮機やタービンはターボ機械と呼ばれ、回転する羽根車を介して流体と機械の間でエネルギーの変換を行います。身近なところでは、換気扇やエアコンの室外機、パソコンのファンなどもターボ機械にあたります。航空エンジンの高性能化とはつまり、燃費のいい高効率なエンジンを開発するということです。流体工学を応用し、圧縮機やタービン内部の空気の動きを実験や数値シミュレーションによって解析し、それらをいかに効率良く機能させるのかが課題です。私の主たる研究テーマが、このコンピュータによる数値シミュレーション。目に見えない流体の動きを可視化することにより、ターボ機器やガスタービンにどういった現象が起きているのか、また今後どんな現象が起きるのかを分析し、羽の形状の改善などにつなげます。高効率化によって航空エンジンの燃費が向上すれば、航空運賃の低下につながり、今よりもっと気軽に海外へ行くことができるようになるでしょう。また航空エンジンの高性能化は、騒音の低下や信頼性・安全性の向上にもつながることから、これらの課題を研究し改善していくことで、より安心でかつ快適な空の旅が実現することになります。研究分野の関係から、当コースでは重工業メーカーなど企業との共同研究にも取り組んでいます。大学で行うのは基礎的な研究ではありますが、いずれ実装されるかもしれない航空エンジンの研究開発に携われることは、学生にとって大きなやりがいです。また第一線で活躍する研究者の方と接することで、よい刺激をもらっています。航空エンジンには、さまざまな機械工学の専門知識が集約されています。また航空宇宙分野では多くの最先端技術が使われています。学生には、関連する高い専門知識を習得し、それらを生かして社会で活躍できる人材に成長してほしいと思っています。「計算」「実験」それぞれの分野を得意とする教授陣がそろう当コース。多角的な視点からの学びを得ることがきます企業との実践的な共同研究が魅力より高性能な航空エンジンを目指して9つの風洞実験装置を備えた「環境風洞実験棟」。航空エンジンの回転試験など、ここでさまざまな実験が行われますProfile1975年生まれ、福岡県出身。九州大学大学院工学研究科博士後期課程修了。専門は、流体工学、大規模数値解析、ガスタービンの高性能化。九州大学大学院工学研究院助教を経て、2018年5月より現職。奥さまとお子さんを福岡に残しての単身赴任で、約10年振りの一人暮らしに四苦八苦中。山やま田だ 和かず豊とよ 准教授システム創成工学科 機械科学コース理工学専攻 機械・航空宇宙コースFACULTY OF SCIENCE AND ENGINEERING20

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