岩手大学 理工学部
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鋳造とは、鋳型の中に溶かした金属を入れて鋳物を作るというもので、岩手県の伝統工芸文化である南部鉄器は、その代表例のひとつです。自由な造形とリサイクル可能という鋳鉄は、今や自動車部品、機械用部品、家電用部品、厨房品などを構成する上で欠かせない基板材料となっています。基板材料を作る素形材材料産業の貢献なしには、日本のものづくりは成り立たないともいえます。私が特に力を入れているのが、高性能な鋳鉄「薄肉強靭鋳鉄」の開発研究です。鋳鉄の強度を増すことによって部品を薄く、かつ軽量化することができます。それによって自動車の重量を軽くし燃費の向上にもつながると考えます。現在は鋳造企業と連携し、自動車エンジン部材やブレーキディスクへの応用(製品化)を図っています。将来的に目指すのは、「キャスティングバレー(Casting valley:鋳造の拠点)」の構築です。キャスティングバレーとは、岩手県奥州市を中心に一関市、北上市、花巻市、盛岡市までの鋳造関連企業が集まる北上盆地地帯の仮称です。谷(Valley)と呼ばれる北上盆地に、鋳造関連企業や大手自動車関連企業、機械部品加工企業などを中心としたものづくり企業、そして研究所(岩手大学鋳造技術研究センター、奥州市鋳物技術交流センター)、関連企業が密集しているため、鋳造を意味するキャスティング(Casting)にちなんで名づけられています。この取り組みをさらに推し進めていくことで、持続的イノベーション(革新)を創出し、世界と競争できる地域イノベーションの拠点づくりにつなげていきたいと考えています。大学院金型・鋳造プログラムは、日本のものづくりを支える金型と鋳造という基盤技術の教育と研究に特化した、日本で初めての大学院です。特徴のひとつとして、6カ月にわたる長期のインターンシップを実施。その期間、教員が訪問して進捗状況の把握と指導を行い、修士論文を作成します。インターンシップ終了後、連携企業へ就職するケースも少なくありません。また、座学・実習では「技術経営(MOT)」も学ぶことができ、経営的センスを備えた高度技術者の育成にも取り組んでいます。金型・鋳造プログラムで学ぶものづくりにおいて大切なこととして、 「KKD+S」を挙げています。これは、「経験」、「感」、「度胸」に 「サイエンス(科学)」を加えることです。 そして何より大事なのは「ものづくりが好きになること」です。高度技術者を育成し、岩手をキャスティングバレー(鋳造の拠点)へ高周波溶解炉で溶かした鉄を鋳型に流し込み鋳鉄がつくられます。岩手大学「鋳造技術研究センター」の工場は、ものづくり研究棟として地域企業にも開放していますProfile1964年生まれ。宮城県出身。工学博士。東北大学大学院工学研究科修士課程修了。1990年から岩手大学工学部助手。助教授、准教授を経て、2008年から教授に就任。研究内容は、鋳鉄の高強度化・高機能化。鋳鉄と異種材料との複合化。趣味はテニスやスキーなどのスポーツをすること。岩手県内の温泉を巡りくつろぐのも楽しみのひとつ。平ひら塚つか 貞さだ人と 教授数理・材料理工学科 マテリアルコース地域創生専攻 地域産業コース金型・鋳造プログラム| 高校生のための研究紹介 | 高校生のための鋳造体験実習。鋳造実験は学部生にも人気の実験で、自分だけのものづくりを体験することができますIWATE UNIVERSITY23

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