共同獣医学科大准教授出准教授飯いいだ田俊としあき彰よしたかとしな 水田稲作はアジアの米食文化圏での農業の基幹 それに対する切り札として期待されているのが近年ト農業です。日本では既に様々なスマート農業機器した場合の経営改善の定量的評価といった、スマート 省力化という現場での切実な課題の解決を目指し、ート水管理機器メーカー、圃場整備を行う国や県なです。しかし、日本を含むこれらの地域では、水田稲作は後継者難と高齢化に直面しています。少ない人員で必要な量を安定して社会へ供給するため、水稲栽培の省力化が強く望まれています。水稲栽培では以前は耕起整地、田植え、刈取脱穀に多くの労働時間が割かれていましたが、農業機械の普及でこれらの労働時間は大幅に減少し、相対的に普段の管理にかかる労働時間が増大しています。水稲は湛水した水田で栽培されるため、普段の湛水状況の見回りや適切な水深に設定する水管理は欠かせない作業であり、分散した多数の区画の水管理は水田稲作農家の大きな負担になっています。急速に進歩している情報通信技術を活用したスマーが製品化されており、湛水深の遠隔監視や給水栓の遠隔操作ができるスマート水管理機器も登場しています。しかし、これらの機器はコスト高の割に得られるベネフィットが定量化されておらず、その普及は進んでいません。多数の水田区画全てに高価なスマート水管理機器を設置するのは得策ではありません。そこで、スマート水管理機器の効率的な導入方法、導入水管理機器導入の効果について研究を行っています。大規模に水稲作を行っている農業法人や農家、スマどの公共機関などとともに共同研究体制を構成し、持続的な米生産と消費者への安定供給を目指して研究を進めています。スマート農業による水田水管理の省力化をめざして食料生産環境学科 岩手県に生息していたイノシシは、1890年頃に狩猟によって絶滅したと言われています。しかし、近年、福島県以南に生息していたイノシシの分布域が拡大し、岩手県内でも捕獲や目撃が相次ぎ、農作物被害も発生しています。これまでイノシシの研究が行われてきた関東地方や西日本地域では、イノシシは落葉広葉樹林、耕作放棄地や竹林を好んで利用することが知られています。北東北地域にはモウソウチクやマダケなどの竹林はありません。そのため、北東北地域のイノシシの行動は、関東地方などのイノシシと異なっている可能性があります。そこで北東北地域のイノシシの行動を明らかにするために、農学部附属演習林でイノシシの生活痕跡調査や、自動撮影カメラによる行動調査を行っています。写真は自動撮影カメラで撮影されたイノシシの様子です。また、イノシシを捕獲して、GPS首輪を取り付け、行動圏を調査することも計画しています。 野生動物による農作物被害の増加の原因の一つとして、里山の消失により、野生動物の生息域と農地が直接接したことが指摘されています。そこで、林内にウシを放牧することによって、野生動物と人の生活圏との緩衝帯としての里山機能を創出して、農作物被害対策に活かせないかといった研究も行っています。教授北東北地域におけるイノシシの行動動物科学科動物科学科動物行動学研究室でぐち口善 ガンとは、細胞が歯止めなく増殖するようになった状態で、放っておくと全身に転移し、やがては個体を死に至らしめてしまう恐ろしい病気です。獣医療の発展やオーナーの健康に対する意識の向上により、伴侶動物の長寿命化が進んでいる昨今、ガンに罹患するイヌやネコなどの伴侶動物も増加する傾向にあります。以前より、医療に限らず獣医療でも、ガンの治療には3大療法とよばれる放射線療法、外科療法、化学療法が一般的に用いられてきました。これらに加えて近年新たに開発されつつある治療法として、分子標的療法というものがあります。ガン細胞だけが発現している分子を標的とし、ガン細胞だけを死滅させるという治療戦略です。その中に、抗血管新生療法というものがあります。これは、ガン組織に栄養を供給する血管(腫瘍血管といいます)を選択的に破壊することで、ガン組織の成長を抑制するという治療法です。ガン組織の血管だけを選択的に破壊し、正常な組織の血管への影響は少ないため、これまでの放射線療法や化学療法ではある程度避けることの難しかった副作用の心配が少ないという点が優れています。 この抗血管新生療法を、より効果的に作用させる方法を研究しています。具体的には腫瘍モデルマウスを用い、このマウスに血管新生阻害剤とともに様々な薬剤を投与し、がん細胞や腫瘍血管、腫瘍リンパ管の機能・形態を解析することで、有効で安全な抗血管新生療法の開発を目指します。その成果は伴侶動物の治療のみならず、ヒトのがん治療の発展にも寄与する可能性を秘めています。血管・リンパ管新生機構の解明と新規ガン治療法の開発共同獣医学科獣医生理学研究室おおぬま沼俊隆名7食料生産環境学科農業水利学研究室
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