岩手大学 理工学部
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小こ林ばやし 悟さとる 教授18当コースには、金属、有機材料、複合材料、ナノ材料、超電導材料、半導体材料など、さまざまな材料(マテリアル)を専門とする教員がおり、初年時より基礎から応用まで系統的に学習することができます。また、学部・大学院ともに就職状況が極めてよいのも魅力の一つです。当研究室は、磁石の性質を持つ非常に小さな粒子「磁性ナノ粒子」についての研究を行っています。微小原子磁石の集合体である磁性粒子は、磁場の大きさや方向、変化の速さなどにより、微小原子磁石の並び方が逐次変化します。またこの変化は、磁性粒子の形態や粒子間の距離、粒子を分散する溶媒の種類によっても変わってきます。そこで当研究室では、さまざまな形態の磁性ナノ粒子を合成し、マクロ及びミクロ的な実験手段、計算機によるシミュレーションを駆使して、磁性ナノ粒子の磁石としての振るまいの本質を研究しています。私たちが今注目しているのが、磁性ナノ粒子の「ハイパーサーミア(温熱療法)」への応用です。磁性ナノ粒子に非常に高い周波数の交流磁場をかけると、微小原子磁石の回転や粒子全体の回転により熱が発生します。この熱で、がん細胞を死滅させようというのです。体外から磁場をかけ、薬剤を含んだナノ粒子を患部まで誘導する「ドラッグデリバリー技術」と融合することで、さらに効果的な治療が可能になります。磁性粒子の集合体としての動き(マクロ特性)や、原子磁石の配列の仕方(ミクロ的特性)、コンピュータを使ったシミュレーションなど多角的な観測・分析から、磁性ナノ粒子の磁石としての振るまいの本質を研究このような磁性ナノ粒子を使ったがん治療は、外科治療や放射線治療などの従来法と比べ、副作用や体への負担が少ないなど大きなメリットがあります。しかし、海外の一部で臨床試験が行われているのみで、まだ実用化されていないのが現状です。もし実用化されれば、がん治療技術の大きな発展が見込まれるでしょう。私たちの研究の目的は、磁性ナノ粒子を実際にがん治療などの医療分野に役立てることです。そのためには、化学、生物、電気、医療分野など、ほかの研究者との密接な連携が必要不可欠です。磁性ナノ粒子のマテリアルとしての特性を明らかにし、間接的にでも皆さんの健康に貢献できるようにすることが私たちの将来の夢です。磁性ナノ粒子は、非常に裾野の広い材料です。将来、まったく想像しない分野で使われるようになるかもしれません。私たちの健康や身の回りの生活を、磁性ナノ粒子を通して変えていきましょう。加熱時間や温度を変えることで、中空や八面体、リング状などさまざまな形、サイズ、構造のナノ粒子を作ることができますProfile1971年生まれ、福島県出身。東京理科大学理学部第一部物理学科修了。専門は、磁性ナノ粒子の磁化機構に関する研究。岩手生活は15年目。盛岡の好きなところは、人が多くなく、夏が涼しいところ。最近は山歩きにはまっているそうで、研究室の学生と 岩手山登山を計画中とのこと。物理・材料理工学科 マテリアルコース理工学専攻 材料科学コース生体医療分野への活用に期待生体医療分野への活用に期待多くの可能性を秘めた「磁性ナノ粒子」多くの可能性を秘めた「磁性ナノ粒子」

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