岩手大学 理工学部
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藤ふじ本もと 忠ただ博ひろ 教授22デザイン・メディア工学コースは、デザイン工学分野とメディア工学分野から構成されています。私の所属するメディア工学分野では、CGのほかコンピュータビジョンやコンピュータネットワークなどを学びます。デザイン工学分野では、プロダクトデザインや映像メディア表現、環境センシングなど、さまざまなデザインに関する教育研究を行っています。両分野について広く学びながら、自分の専門分野について深く学べるのがこのコースの魅力です。卒業生たちは、ゲーム会社やコンテンツ系企業のほか、ソフトウェア開発や情報産業、またデザイナーなど、さまざまな分野で活躍しています。私の専門は、コンピュータを使って映像を作るコンピュータグラフィックス(CG)です。CG映像を作るためには、コンピュータの中に3次元の仮想世界を作り、その世界がどのように見えるかをコンピュータで計算して画面に表示します。現在私は主に、2つの研究テーマで新しい技術の開発に取り組んでいます。  一つ目は「ビデオベースCG」というもので、ビデオカメラで撮影した実世界の映像を合成してCG映像を作る技術です。複数のカメラで撮影した多視点映像を使い、あらゆる視点から見た映像を合成する「自由視点映像技術」や、複眼カメラを使って目の前の実世界にある物体を画面上でリアルタイムに動かすことができる「実時間ビデオエディット技術」などを開発しています。「実時間ビデオエディット技術」を使えば、不要なものを画面から消去したり、別の場所に自由に移動させたりする映像編集がリアルタイムでできるようになりますまったく別の画像から類似領域を見出し、1枚の自然な画像に合成する「画像モンタージュ技術」2つ目は「画像合成CG」といって、もとの画像から新しい画像を合成する技術です。例えば、全く異なる2つの風景を撮影した2枚の写真から、まるで実在するかのような自然な画像を自動で合成する「画像モンタージュ技術」や、ユーザーがペイントツールで描いた画像を本物らしく見える画像に合成する「画像合成ペイントツール」などがあります。目で見ることのできる映像は、人にわかりやすく情報を伝えます。それは、人と人とのコミュニケーション手段の一つであり、CGもまた、人間同士のコミュニケーションを豊かにする技術であると私は考えます。離れた場所にいる人同士が仮想的な空間でつながり、その場所を自由に動き回ったり同じものを見ながら会話することも可能になります。これらの技術が、在宅勤務の実現や、高齢者の一人暮らしの問題の解決、教育分野への応用など、さまざまな分野に応用されることを期待しています。Profile1966年生まれ、宮城県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程計算機科学専攻修了。専門は、情報工学、コンピュータグラフィックス。山形県で暮らす家族と離れて、現在は盛岡に単身赴任中。「岩手の魅力は、食べ物がおいしいなどいろいろありますが、いちばんは『落ち着く雰囲気』」。システム創成工学科 知能・メディア情報コース理工学専攻 デザイン・メディア工学コースさまざまな分野への応用に期待さまざまな分野への応用に期待コミュニケーションを豊かにするCG技術コミュニケーションを豊かにするCG技術

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