岩手大学 理工学部
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2537現在現在波長(μm)星形成領域のダストからの遠赤外線中心核ブラックホール周りのダストからの中間赤外線中心核ブラックホールや星形成領域からの電波20501005005000120cm 宇宙は138億年前の誕生直後にインフレーションとよばれる10の22乗倍にもなる急激な膨張をした。このとき、空間は引き延ばされ、ほぼ一様で等方となる一方、銀河などの種となる密度ゆらぎも生まれた。エネルギーが物質と熱に転換されるとインフレーション宇宙は終わり、高温高密度状態のビッグバン宇宙となる。以後、緩やかとなった膨張による温度低下に伴って、クォークから核子が、その核子から原子核が形成された。誕生3分後には水素とヘリウムの原子核と電子と光子に満たされた宇宙は、その後37万年間ほど膨張し3000度程度まで冷えると電子が水素とヘリウムの原子に取り込まれる。それまでは電子と頻繁に衝突していた光が自由に進めるようになり、宇宙は晴れ上がる。この後、最初の星が生まれ、次の、次々の世代と星形成が続き、さらに銀河が形成され、現在の銀河宇宙となった。 有限の速さの光による観測では遠方を見るほど過去にさかのぼれる。宇宙の晴れ上がりまでさかのぼる光の観測をするとイン 2018年9月。種子島宇宙センターから、世界最大の宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機が打ち上げられた。国際宇宙ステーションに必要な物資を届け、さらに宇宙から医療研究用などに使われるたんぱく質結晶を持ち帰る。無事に任務を終えた「こうのとり」7号機は大気圏突入の直前に、日本初となる小型回収カプセルを分離。たんぱく質結晶を載せたカプセルは予定されていた小笠原諸島南鳥島沖に無事着水し、計画は見事に成功した。 岩手大学ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)からの受託研究を受け、カプセルが降下する際の気流の乱れとカプセルの揺れ磁気支持装置を用いて行うカプセルの振動飛行風洞実験フレーションの化石である密度ゆらぎも明らかにでき、それは現在の銀河分布をよく再現している。このようにゆらぎを種として最初の星が生まれ、さらに太陽系と生命の誕生までをつなぐ銀河へと進化してきたはずである。その未だ捉え切れていない銀河宇宙を明らかにするために、花見・石垣らはより遠方の天体を様々な波長の光で観測することを模索する日々を重ねている。について研究している。今回の「こうのとり」7号機の計画には参加していないが、カプセルが本格的に運用される未来に向けて、最先端の研究と実験を行っている。 「空気の流れをコンピューターでシミュレーションするとともに、3/100縮尺の風洞模型での実験も行っています。磁石で浮遊させたカプセルに風を当てることで、その揺れ方を観測します」と語るのは上野和之教授だ。岩手大学では、実験に必要な装置自体の開発も手掛けている。 近年では月の地下に巨大な空洞があることがわかり、水が存在している可能性も出てきた。また、2020年末には小惑星「リュウグウ」から小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還も予定されている。これから先の宇宙開発は、ますます目が離せないものになっていくだろう。物理・材料理工学科 数理・物理コース花見 仁史 教授   石垣 剛 准教授システム創成工学科 機械科学コース宇宙の進化生命の誕生[40億年前]地球の誕生[46億年前]銀河の形成と進化最初の星[130億年以上前]晴れ上がり(37万年後)量子のゆらぎの生成宇宙創生[138億年前]1/10001/21中間赤外線遠赤外線電波水素原子水素原子核原子核と電子[3分]陽子クォーク[10-34秒] 物質の進化原子[37万年]核子[10-4秒]ビッグバンインフレーション10明るさ(等級)15ヘリウム原子20星からの紫外線と可視光25中性子1.05.0ヘリウム原子核電子陽子中性子宇宙の大きさ40億年前の成長期にある銀河のスペクトル紫外線可視光カプセルまわり気流とカプセル運動を連成させた空気力学シミュレーション上野 和之 教授銀河の進化を探る量子のゆらぎから生命をつなぐ銀河宇宙へ飛び出すJAXAと協力し回収カプセル本格運用へ

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