岩手大学 理工学部
15/54

教授これながとしのぶ 敏是永伸IWATE UNIVERSITY化学コース修士:理工学専攻/物質化学コース大学理工学研究科を修了。専門は、有機合成化学、計算化学。製薬企業の研究所勤務などを経て、2012年より岩手大学に勤務。趣味は野球観戦、城めぐり、写真撮影。特に山の撮影が好きで、富士山の写真を好んで撮るが、野球のベストショットを撮影するために腕を磨いている。15Profile1969年生まれ、埼玉県出身。東京工業keywordコンピュータ化学を積極的に導入し、難易度の高い量子化学計算も実施。最近ではさらに、AIを導入した研究も行っています。【キーワード】 有機化学/合成化学/化学物質/触媒/医薬品/コンピュータ化学/分子デザイン/創薬加熱や冷却、蒸留やガス下での反応など、さまざまな手法を用いて行われる有機合成。開発した触媒を用いて、医薬品分子の開発や合成を行っています。118種類の元素で構成される化学物質からできています。ヒトや化学や化学物質と聞くと、汚染物質のようなマイナスのイメージを抱く人もいるかもしれません。しかし、世の中のすべてのものは、動物の体はもちろん、食品や医薬品、また私たちの暮らしに欠かせない自動車やスマートフォンといった工業製品の材料もすべて化学物質の集合体です。いわば化学とは、木(=産業)を支える根っこのようなもの。そんな化学を、分子レベルで操ることができるのは「化学者」だけなのです。私の専門は有機合成化学で、なかでも医薬品をつくるための触媒の研究に取り組んでいます。触媒とは特定の化学反応の反応速度を変化させる物質のことで、化学工業の80%以上は触媒を用いた合成とも言われており、21世紀に入ってからすでに5つもの触媒研究がノーベル化学賞を受賞しています。それだけ、社会を変える力を持つ重要な分野であるといえます。医薬品分野においても、触媒の力によって、非常に複雑な構造である医薬品分子が、確実に、迅速に、そして低コストで製造されています。当研究室でも、医薬品の効率的な合成をかなえる新規触媒の開発や、その触媒技術を応用した新規合成法の開発、合成技術をもとにした新しい治療薬の開発(創薬研究)などを行っています。研究室で開発した触媒のなかには一部販売されているものもあり、実際の医薬品の製造に使用されています。また研究では、分子の挙動の解明や未知分子の性質を予測するために量子化学計算を積極的に活用しており、教科書を書き換える理論も発見しています。医薬品の開発というと、薬学部を想像する人も多いでしょう。しかし製薬会社の研究職の半数は、薬学部以外の出身であり、私の研究室の卒業生も、数多くの製薬企業に就職しています。これは、分子を自在に設計・合成する技術を持った有機合成化学者は、製薬企業には欠かせないからです。また医薬品分野だけでなく、化粧品、半導体、次世代バッテリー、太陽光発電、環境改善など、あらゆる分野で化学者の必要性は高まっており、今後いっそう重要性が増す学問分野が化学なのです。化学コースでは基礎力の習得を重視し、3つの基盤科目(物理化学・無機化学・有機化学)を、世界標準の教科書を使った講義と豊富な演習で丁寧に指導します。ここで培った基礎力は、高度な研究力の修得に大きく寄与します。実際、多くの卒業生が本コースでの学びを生かし、大手企業の研究者や技術者として多方面で活躍しています。化学物質を分子レベルで設計化学物質を分子レベルで設計理工学部だからこそできる理工学部だからこそできる医薬品研究医薬品研究

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る