岩手大学 GUIDE BOOK 2026
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IWATE UNIVERSITY 2026ぜん 寄生虫には単細胞生物の「原虫」と多細胞生物の「蠕ちゅう虫かんの確立は不可能と考えられてきました。私達は、肝てつ蛭獣医学部 教員研究紹介Introduction to Research51」がありまという寄生虫を馬や牛の繁殖成績向上を目的とした技術開発慢性腎臓病から猫を救う大型の寄生虫を試験管内で培養する試み:新規実験系の創出を目指してマウスの遺伝子を操作して、病気の発症メカニズムに迫る腫瘍血管・リンパ管新生機構の解明とそれらを標的とした新規治療法の開発農場から食卓まで衛生的な畜産物の提供獣医繁殖学 私の所属する繁殖機能制御学研究室では、馬や牛を対象として「動物の生殖機能発現に関わる生体機構の解明(繁殖機能)」「生殖機能を阻害する疾患の治療や予防に向けた技術開発(機能制御)」「動物が本来有する生殖機能を超えた繁殖効率を発揮させる技術開発(機能制御)」の3つの研究を進めています。獣医学部の繁殖学の研究室は、他大学では「獣医繁殖学」「臨床繁殖学」といった名称で呼ばれていますが、本研究室は全国唯一の「繁殖機能制御学研究室」として、馬や牛の研究や診療を頑張っています。獣医外科学獣医腎泌尿器病学 近年、猫の慢性腎臓病の進行要因として、腎臓の虚血や酸化ストレスが注目されています。「L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)」は腎尿細管における虚血ストレスの増加に伴い、尿細管が障害される前に速やかに尿中へ排泄される腎保護性蛋白です。我々は従来の腎機能評価バイオマーカーとは異なり、腎障害発症・進行の引き金となる腎臓へのストレス負荷度を評価可能なL-FABPを代表とする腎障害発症予測マーカーについて研究を進めています。また、慢性腎臓病に対する臨床腎移植についても研究しています。獣医寄生虫病学す。マラリアなどの原虫は「試験管内培養」を用いた薬剤やワクチンの開発研究が進んでいますが、蠕虫である回虫、サナダ虫、住血吸虫など目で見える寄生虫は、動物体内での発育が複雑で、試験管内培養法用いて、不可能とされる試験管内培養法の確立を目指しています。実現すれば、開発途上国を中心とする人や動物の寄生虫感染症を撲滅する研究開発の推進が可能になります。実験動物学 ゲノム編集技術によって、さまざまな動物の遺伝子を簡単に操作できるようになりました。私は、ゲノム編集で遺伝子操作されたマウスに発現する異常を調べることで、その遺伝子の生体内での役割について調べています。最近では「牛複合脊椎形成不全症」の原因遺伝子として報告されていたSlc35a3遺伝子を欠損させたマウスと正常マウスの体内で産生される糖鎖を比較することで、牛複合脊椎形成不全症の発症に関わっているいくつかの糖鎖を同定しました。これらの糖鎖は脊椎形成不全の治療ターゲット分子として期待されています。獣医生理学 「がん」は、細胞が際限なく増殖して全身に転移し、やがては個体を死に至らしめる恐ろしい病気。伴侶動物も長寿命化が進み、がんに罹患するケースも増加しています。本研究室では、近年開発されつつあるがん治療法の一つ「抗血管新生療法」をより効果的に作用させる方法を研究しています。腫瘍モデルマウスに血管新生阻害剤とともに様々な薬剤を投与し、がん組織を解析することで、より有効で安全な抗血管新生療法の開発を目指します。その成果は伴侶動物のみならず、ヒトのがん治療の発展にも寄与する可能性を秘めています。獣医公衆衛生学 サルモネラによる人間の食中毒は、国内で年間20件程度発生しています。家畜も同様で、2023年には特定の血清型によるサルモネラ症が、牛で217件、豚では77件の届出がありました。安全な畜産物を食卓へ届けるには、農場における飼養衛生から始まり、食卓にあがるまでの全ての流通過程、つまり「と畜場・食品加工場・家庭」において、病原体が「付かない、増えない、殺菌する」という対策が重要になります。本研究室では、適切な管理が行われるための検査系の研究開発や病原体の病性発揮の解明に係る研究を行っています。獣医遺伝育種学研究室・教員紹介共同獣医学科教授 髙橋 透獣医学部附属動物病院教授 片山 泰章共同獣医学科准教授 関 まどか共同獣医学科教授 古市 達哉共同獣医学科准教授 大沼 俊名共同獣医学科助教 藤原 正俊

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