東京海洋大学 2020 統合報告書
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プロジェクトを通じて得た国際経験を将来に生かしたい大学院海洋科学技術研究科 応用生命科学専攻 博士後期課程1年 今泉健太郎さん▶現在のご自身の研究課題とSATREPSとの関連について教えてください。クルマエビ類の養殖に関して、養殖池の微びせいぶつそう生物叢※4について分析し、それがエビの成長速度や病気への罹患率等にどのように影響するかを研究しています。SATREPSの対象は主にバナナエビですが、まずは、現在タイ国内で広く養殖が行われており、同じクルマエビ科に属するバナメイエビを対象として研究を行っています。養殖する上で最適な池の状態を明らかにすることが最終目標です。タイ滞在時は、現地の養殖池から採取してきた水の微生物を集め、DNAの抽出を行ってきました。現在は持ち帰ってきたDNAを解析して池の中の微生物叢を特定し、池ごとの比較を行っています。▶2019年の7・8月にタイに長期滞在されたそうですが、その際の印象は?タイでは企業による大規模養殖が進んでおり、養殖技術が確立され、それが中小規模の養殖業者にも普及しているという印象でした。日本では代々続く小規模な経営体が多いため、技術開発のための多額の投資やデータを利用した養殖業が行われることはあまりないようです。技術革新といった観点では、日本の養殖業も、未だ道半ばにあるのだと感じました。海外の養殖現場から学ぶ点も多くあります。▶現在留学生が多い研究室に所属し、ご自身も国際学会で成果発表をされていますが、英語はもともと得意でしたか?英語はあまり得意ではありませんでした。学部2年生のころに始まったグローバル人材育成事業※5でのプログラムも、存在は知っていましたが参加はしていませんでした。そのような中で現在の研究室に決めたきっかけとなったのが、3年次に受けた廣野先生の実験の授業での体験です。留学生班にいる日本人学生が英語で自然に会話しているのを目にして、かっこいいなと思いました。研究室に所属してから留学生や研究室を訪れる海外の研究者の方々と話をする機会を通して、英語を使うことに自信がつきました。海外旅行に行くこともあまりなかったのですが、廣野先生に海外経験を積む機会を頂き、視野が広がりました。今までの自分はどれほど狭い世界で生きてきたんだろうと思いました。卒業後は、国際的に活躍できるような仕事をしたいと考えています。東南アジアの国々の研究者や養殖関連の企業の方々の多くは、日本に対してとても好意的です。それは、先達の方々の尽力によるところが大きいでしょう。そのつながりを絶やすことのないよう、次は私が頑張っていきたいです。学生インタビュータイ水産局養殖施設にて国立大学法人 東京海洋大学:統合報告書Integrated Report33海洋大の協定校はどこにある? 本学は国際交流協定に基づく留学生・研究者の受入や外部資金を利用した共同研究を通して、海外、特にアジアと積極的に交流し、世界共通の海洋に関する課題について、解決方法を探っています。※1 JSPS拠点大学交流事業:https://www.jsps.go.jp/j-core/index.html※2 JSPSアジア研究教育拠点事業:https://www.jsps.go.jp/j-acore/※3 岡本信明元学長代表プロジェクトWebサイト: https://www.kaiyodai.ac.jp/exchange/satreps/satreps/index.html※4 微生物叢…ある特定の空間に存在する微生物の集団のこと。細菌のみを対象とする場合、細菌叢とも呼ばれる。※5 グローバル人材育成事業…JSPSグローバル人材育成推進事業(タイプB・2012年度採択)により開始した事業。PICK UP: RESEARCHアジア61%欧州14%北米 8%南米6%中東6%大洋州 4%アフリカ 1%2019年5月1日現在

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