東京海洋大学 2020 統合報告書
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1. 運航経費の波 練習船の運航には、エンジンを動かすための燃料費が必要となります。南極海も航海する本学最大の海鷹丸の場合、1年間の重油は約1,300キロリットル。年間の燃料費は数千万円~1億円超となります。燃料費は国際的な原油価格変動を受け、日々大きく増減します。2004年の国立大学法人化当時に比べると近年の原油価格は約2倍以上も上昇しており、これが運航経費の増加の要因となっています。(グラフ1 原油価格の変動図)2. 修繕経費の波 船舶は、毎年ドック※1に入り、法定の検査を受け、 必要に応じて修繕を行い、安全の証である船舶検査証書を得る必要があります。漁船登録されている海鷹丸クラスの大型船の法定検査には、5年に1回の定期検査、その中間年に行う第二種・第三種中間検査、及びその他の年に行う第二種中間検査があります。こうした検査と修繕のための経費は大型船1船につき毎年度数千万円から1億円程度となり、修繕の規模により年度毎に金額が大きく変動します。(グラフ2 棒グラフ) また、経年劣化による修繕箇所の増の他、修繕を行う造船会社の熟練技術者の減少による人手不足や材料価格の高騰などの社会的な要因により船舶修繕費は年々高額になる傾向にあります。3. 経費の波を越えるには  国からの予算措置と本学の対応 これらの運航経費や修繕経費の財源は、国からの教育研究経費として基盤的な運営費交付金で継続的に措置していただいていますが、元々2004年に国から法人化するに際してそれ以前の実績額を基に積算されたほぼ均一な金額が、毎年措置されているため、上述にてご紹介させていただいた運航経費及び修繕経費の波の高さと必ずしも一致しません。 こうした状況へ対応し、本学の伝統的使命である船舶職員養成(24ページ)のための実習や、海洋におけるマイクロプラスチック等の分布状況調査(28ページ)などの社会的課題に対応した調査・研究が継続的に実施できる環境を整備するため、本学では船舶修繕費について、6年間の資金計画を立て、大型の修繕を行う定期検査の年度に合わせて資金の繰越等を計画的に行い、各年度に必要な財源を確保する仕組を整備(グラフ2 矢印部分)するとともに、調査・研究のための外部資金の獲得や経済的な速度による運航効率化の追求等の経営努力を行っています。  これからも本学が船舶の保有・運航による経費増大の波を越え、海洋の未来を拓いていくために、みなさまからも本学の特色である練習船による教育と研究にご理解とご支援の声を賜れば幸いです。※1 船の性能維持に関わるところを入念に整備する「船の診療所」(人間ドックの語源ともいわれます)COLUMN: 船舶にかかる経費の波原油価格は2004年の国立大学法人化当時に比べると約2倍以上上昇しています。12000876543210(万円)199019952000200520102017(万円/kl)グラフ1 日本に到着する原油の価格(CIF価格)グラフ2 各年度の運営費交付金積算と船舶修繕費の関係(イメージ)OPECの高価格志向商品市場への投資資金の流入→↑国立大学法人化↑リーマンショック米国のシェールオイル増産、欧州・中国の景気減速OPEC総会における減産見送り等■船舶修繕費(ドック経費) ■差額 ─ 運営費交付金積算額120001000080006000400020000876543210年度nn+1n+3n+2(中間検査)n+4(定期検査)(万円)199019952000200520102017(万円/kl)グラフ2 各年度の運営費交付金積算と船舶修繕費の関係(イメージ)OPECの高価格志向商品市場への投資資金の流入→↑国立大学法人化↑リーマンショック米国のシェールオイル増産、欧州・中国の景気減速OPEC総会における減産見送り等その保有・運航により本学ならではの大きな強み・リソースとなっている船舶。本ページでは、そんな船舶について、運航に必要とする経費の波をご紹介しながら、種々の社会情勢を踏まえ、本学が強み・リソースを守るため、どのような対応を行っているかご説明いたします。各年度に均一化して積算された予算と経費の差額(予算-経費)を、経費が高い年へ繰り越して使用できるように計画的に執行しています。Tokyo University of Marine Science and TechnologyIntegrated Report44

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