東京海洋大学 ガイドブック2024
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■食品加工学付加価値の高い水産食品加工技術に関する研究一般的な食品加工の工程には、原料の採取、洗浄、混合、加熱、乾燥、包装、貯蔵などがあります。これらの製造プロセスの中で、食品素材のみならず、加工・貯蔵の技術およびそれに伴う成分変化は食品の品質に影響します。私たちの研究室では、化学的、物理的、あるいは生化学的な視点から、安全かつ付加価値の高い食品(主として水産食品)の製造プロセスを具体化するための食品設計技術の開発や製造プロセスにおける安全評価システムの確立を目指しています。具体的には、原料から消費に至るまでの安全性に関わるプロセスの高精度な定量的解析、水産食品低温利用技術の開発、未利用食料資源の有効利用、及び付加価値の高い水産食品加工技術の開発に関する総合的な研究に取り組んでいます。■食品保全化学食品中の脂質および脂溶性化合物の健康機能や体の中での役割を調べる脂質(油)には多種多様な種類があり、体の健康を維持するために重要な役割を担っています。私たちは脂質を“有機合成”という方法を用いて、新規の脂質や機能性が高い脂質を作り出し、マウスやラットなどの動物や細胞を用いてその健康機能を評価しています。健康機能だけでなく、脂質がどのように体内にとりこまれ、どのような機能が体内で発揮されているのかを追跡するような実験も行っています。このように食品中の脂質や脂溶性化合物を用いて人々の健康維持・増進につながるような研究に取り組んでいます。■食品衛生化学食物アレルギーから考える食品の安全性私たちの周りは様々な食品であふれていますが、毎日口にするものであるからこそ食品の安全性や品質に気を付けなければいけません。特に食物アレルギーは重篤な健康被害をもたらすこともあるため、その原因物質(アレルゲン)や作用機序についての研究は食品衛生上とても重要です。私たちの研究室では、魚介類やその寄生虫(アニサキス)のアレルゲンの特定、食品原料・医薬品・化粧品に含まれる成分のアレルゲン性を予測する新たなシステムの開発、さらには、ヒト脳機能の改善を視野に入れたイカ由来の神経伝達物質や魚介類の食味向上などについての研究を行っています。安全で品質が良く人類の幸福につながるような食品を皆さんに提供できるように、最新技術を駆使して幅広い研究に取り組んでいます。■食品熱操作工学食品の熱処理の予測と制御熱処理は、食品の貯蔵寿命を延ばすために最も広く使用されている技術の1つであり、微生物を死滅させるともに、食品の風味、食感、外観、および消化率を改善させます。一方で、過度の加熱は、栄養成分の消失や好ましくない食感となって品質が低下する可能性があります。そのため、短時間で均一な温度分布が得られ、なおかつ環境負荷が少ない熱処理方法が望まれます。これを実現できる技術の1つが通電加熱です。通電加熱は食品に直接電流を流すことによって生じるジュール熱を利用したもので、様々な食品加工への適用が期待できます。さらにコンピューターシミュレーションを活用することで、熱処理における温度変化を予測し、微生物の死滅の程度や、品質変化などを計算し、最適な熱処理条件を導くことも重要です。アレルゲン特定のための実験風景未利用資源の有効活用の一例~サバの皮から生分解性フィルムの開発サバの皮サンプル処理の様子コンピューターシミュレーションによる殺菌価分布の予測実験動物の飼育風景クリーンベンチや実体顕微鏡を使った研究風景可食性フィルムジュール熱の発生に関わる電気伝導度を測定する様子有機合成の実験風景研究紹介

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