東京海洋大学 ガイドブック2024
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■海洋文化学SDG14海の豊かさを守ろう海と日本との深い精神的なつながりは、世界最古の縄文丸木舟の発掘や、安土桃山期前後における多くのすぐれた日本人船員のアジアの海での活躍というような歴史的な事実により証明されてきています。瀬戸内の塩飽水軍の伝統は、明治以降の日本商船隊にも広く受け継がれました。他方、外国にはその地域ごとに固有な文化があり、それを理解することなしに、例えば、それぞれの海域独自の背景をもつ海賊事象などを抜本的に解決するということは不可能です。海をめぐる国際情勢はますます複雑化してきており、「国連海洋法条約」や「船舶と港湾施設の保安のための国際コード(ISPSコード)」、「水中文化遺産保護条約」その他の国際法が果たす役割も日々高まってきています。こうした中、国連とユネスコは2021年から2030年までを「国連海洋科学の10年」に定めました。「SDG14海の豊かさを守ろう」を中心に、「SDG13気候変動に具体的な対策を」などへの対応が始まっています。■自己位置推定ロバストな位置推定に関する研究将来の自動操船支援に必要となるロバストな自己位置推定に関する研究開発を行っています。GNSSは世界中でメートル級の位置を取得できる便利なものですが、干渉等に弱く屋外の開けた場所が前提となります。自動操船では信頼性へのハードルが高いため、GNSSのみに頼らない自己位置推定方法を幅広く研究しています。廉価なIMUとGNSSの統合やカメラやLidarを利用したものです。屋外の開けた場所であればGNSSでcm級の位置及び速度推定が可能であり、IMUやドップラソナーを併用することで着桟時に操船者への負担を減らすための研究及び実験を行っています。また、河川を含めた自動操船を鑑みて、高架下等でもロバストな位置推定を行うためにLidarやカメラによる精密地図生成や自己位置推定の研究及び実験を行っています。複数の研究室の得意な領域を持ち寄り、より堅牢なアルゴリズムを開発しています。■航海システム論船舶航行データを運航支援に関する研究運航支援システムの目的の一つが船舶の衝突リスクを小さくすることです。操縦性能・大きさが異なる様々な船舶が航行する東京湾では、航行規則による船舶交通流の整流や航行管理により大型船同士が近づくことを避けさせることで衝突の発生回数を減らしています。しかし経済活動や気象海象の変化、海洋土木工事による航行海域の制限や工事に関わる特殊な船の航行隻数増加により船舶の交通流が変化することで潜在的な危険が新たに発生しているかもしれません。一方、情報通信技術の発達による新しいシステムが開発・装備されることにより船舶同士もしくは陸上の監視局でも船舶動静を把握しやすくなったことから様々な海域にて長期間の船舶航行データの蓄積が可能となりました。ここでは蓄積される情報を基に海上交通の特性を理解し新しいシステムの利点を活用した衝突リスクの減少、効率的な運航支援に関する研究を進めています。水中考古学調査Lidar等による精密地図生成と位置推定レーダによる船舶動静の計測SDGsへ取り組み(ICOMOS:Heritage & the SDGs)GNSS/IMUを利用した自動着桟支援実験東京湾内を航行するAIS搭載船舶の航跡研究紹介

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