東京海洋大学 ガイドブック2024
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■水圏生態化学海洋生物が持つ毒素や有用化合物について調べる海洋生物は特異な化学構造や顕著な生物活性を有するさまざま■環境測定学海の環境・汚染の計測手法の開発人為的な活動により、海に様々な物質が流入し、海中に分布し環境を変化させています。海洋マイクロプラスチック(以下MPs)はその一例です。5mm以下のプラスチックがMPsと定義されています。MPsは世界中の海域に分布しており、様々な生物へ影響を及ぼしています。しかし、MPsの採取ネットのサイズより小さなMPsの濃度分布についてあまり解明が進んでいません。当研究室では、小さなMPsの測定手法の開発に取り組んでいます。またMPsの影響は多岐にわたることから、他の研究室とも共同して研究を進めています。■藻類学大型藻類の研究を通じた生物多様性の解明と環境保全海藻は日本人に馴染み深い食材ですが、海藻の生き様や生育条件は意外に分かっていません。本研究室では、様々な環境から採集した海藻の形態、遺伝子、生殖・生理特性を調べ、生育環境による違いや、他の生物との関わりについて研究しています。海藻の多様性は変化に富んだ沿岸環境によって維持されていることが分かってきました。絶滅危惧種の多い淡水大型藻の生態も調査しており、希少種の保護や生育環境の保全に役立てたいと考えています。な有機化合物を持つことが知られています。当研究室では、海洋生物から薬の候補になりそうな化合物や毒素を取り出して、その構造を解析し、さらに作用メカニズムを追求するという研究を主に行っています。その結果、クラゲなどの刺胞動物やラン藻など微細藻類からさまざまな新しい化合物を発見しています。今後、これら化合物が医薬学や生理学の発展に寄与することを願っています。■海洋物理学深層大循環の変動と実態解明に迫る地球規模で大気海洋システムを理解し、将来の気候を高精度で予測することが社会的に強く求められています。気候変動の鍵を握る南大洋で、現在進行している温暖化の兆候や影響を定量的に把握する海洋観測、変貌メカニズムを解明するコンピュータ実験を行っています。このほか物理学分野では、日本周辺の海洋動態のメカニズムを解明するコンピュータモデルの開発や海況予測、リアルタイム観測システムの開発、衛星観測ビックデータの解析を通して、海の環境を保全し活用することを目指しています。アンドンクラゲと刺胞動物に特異的な化合物東京湾でのサンプル採集係留観測網で捉える大循環の変貌南大洋に設置している巨大係留系都内で見つかった淡水産大型藻類ニューストンネットによるマイクロプラスチックの採取ニューストンネットで採取されたマイクロプラスチック。赤外分光分析でプラスチックの種類を調べる海藻のモニタリング調査研究紹介

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