東京海洋大学 ガイドブック2025
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■環境測定学海の環境・汚染の計測手法の開発人為的な活動により、海に様々な物質が流入し、海中に分布し環境を変化させています。海洋マイクロプラスチック(以下MPs)はその一例です。5mm以下のプラスチックがMPsと定義されています。MPsは世界中の海域に分布しており、様々な生物へ影響を及ぼしています。しかし、MPsの採取ネットのサイズより小さなMPsの濃度分布についてあまり解明が進んでいません。当研究室では、小さなMPsの測定手法の開発に取り組んでいます。またMPsの影響は多岐にわたることから、他の研究室とも共同して研究を進めています。■海洋物理学・衛星計測学衛星地球観測による地球環境変動研究刻一刻と変動する地球環境は、地球環境観測衛星により常に監視されています。これは衛星地球観測と呼ばれ、地球環境の診断や変動の理解において強力な観測手段です。たとえば海面温度上昇、海面水位上昇、海氷減少などが示されています。一方で、衛星地球観測を利用した社会経済活動への意思決定や、気候変動適応のための方策検討を念頭に、衛星観測ビッグデータを応用した新たな価値創出を担う人材育成が社会から要請されています。海洋物理学分野では、衛星観測に基づくビッグデータ解析、センシング技術のさらなる高精度化、海洋環境変動の指標となる新規ビッグデータの創出を行い、北極海、日本周辺海域、南極海における海洋環境変動メカニズムの解明にかかわる研究を推進しています。37■水圏生態化学化学の視点で海洋生物の生態に迫る海洋生態系内には化合物を介した様々な生物間相互作用が存在します。そこには海洋生物に特徴的な生理活性物質が使われています。生物間相互作用のメカニズムを理解することは地球規模の環境問題が生態系へ与える影響を考えるために必要なことです。本研究室では海洋生物間の化学物質を介した相互作用について、そのメカニズムを解析する研究を行っています。海洋生物が産生する有毒物質や防御物質、配偶行動をコントロールするフェロモンなど、様々な生物活性物質を分析し、生物試験することで、海洋生態系内の多彩な生物間相互作用のメカニズムをを明らかにしていきます。また、これらの生物間相互作用物質を、環境の保全や医学・工学・水産学的に利用するための研究も行っています。■藻類学大型藻類の研究を通じた生物多様性の解明と環境保全海藻は日本人に馴染み深い食材ですが、海藻の生き様や生育条件は意外に分かっていません。本研究室では、様々な環境から採集した海藻の形態、遺伝子、生殖・生理特性を調べ、生育環境による違いや、他の生物との関わりについて研究しています。海藻の多様性は変化に富んだ沿岸環境によって維持されていることが分かってきました。絶滅危惧種の多い淡水大型藻の生態も調査しており、希少種の保護や生育環境の保全に役立てたいと考えています。フェロモンに反応するクリガニの雄(左)とカミクラゲ(右)海洋生物が持つ物質の大型機器を用いた分析衛星地球観測がもたらすビッグデータ衛星地球観測が示す海洋温暖化と海面水位上昇都内で見つかった淡水産大型藻類ニューストンネットによるマイクロプラスチックの採取ニューストンネットで採取されたマイクロプラスチック。赤外分光分析でプラスチックの種類を調べる海藻のモニタリング調査研究紹介

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