神戸大学 統合報告書 2020
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先端的外科医療において高度医療機器の開発は重要です。しかし、現状、多くの医療機器は海外からの高額な輸入品に頼っており、その輸入額は輸出額の約4倍になっています。医療費削減が求められるなか、国産医療機器の開発に向けた統合研究拠点の設置は大きな課題でした。神戸大学は、神戸医療産業都市*においてリサーチホスピタルである神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)を中心として、統合型医療機器研究開発・創出拠点、医療機器開発企業(株式会社メディカロイド等)と連携し、国産医療機器の統合的研究開発拠点を形成し、手術支援ロボットの研究開発に取り組み、先端的手術への応用を目指しています。医療機器分野における最先端の研究開発 デジタル化社会が進むなか、様々な未来医療技術を搭載した統合型次世代ロボット開発が望まれています。2019年から神戸市や産業界とともに「神戸未来医療構想」を掲げ、手術支援ロボット開発とそれに関わる新たなプロジェクトを進めています。これらの事業を遂行していくことにより、神戸医療産業都市の様々なスタートアップ企業が手術支援ロボット開発事業に参画し、地元に新たな雇用が生み出されることが期待されています。1.国産手術支援ロボット開発 メディカロイド社と開発を進めてきた手術支援ロボット「hinotori」は、2020年8月、ようやく薬事承認が得られ、手術現場での応用が可能になりました。同年秋には第1例目の手術を行うことになります。本ロボットは、手術に有用な優れた機能を搭載しており、今後さらに先端機能を付加していく予定です。また、臨床応用に向けて必須である手術支援ロボット操作のトレーニングセンターをICCRC内に開設します。2.ナビゲーションシステム開発 手術支援ロボットの部分的な自動化あるいは自律化、5Gを活かした遠隔手術、遠隔指導の確立を目指しています。 また、8K内視鏡の開発により、これまで以上の解像度を活かして手術を行うことができ、新たな手技の開発や術中の治療判断に役立つ可能性があります。3.予後予測モデル開発 術前・術中の治療判断になる新たな診断法(リキッドバイオプシーなど)やAIによる術式別予後予測モデルを利用した個別化手術(Precision Surgery)の開発により、手術支援ロボットの先端化を図ります。4.フューチャーデバイス開発 術中に利用する体内溶解性の特殊金属材料を用いた医療用デバイスの開発に取り組んでいます。特に、体内溶解性の金属を用いたクリップには期待が大きく、臨床において非常に有用であり、これを用いたデバイスの開発が待たれています。世中変*神戸医療産業都市 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた神戸の経済を立て直すため、震災復興事業として開始された事業。神戸経済の活性化、市民の医療・福祉の向上、アジア諸国の医療技術向上への貢献を目的として、研究開発拠点の整備など様々な事業が進められています。22

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