神戸大学 統合報告書 2020
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先端研究の社会実装を促進し、産業・社会構造に影響を与える新ビジネスを創出することは、日本経済の持続的な発展に不可欠です。神戸大学は、研究成果の事業化を推進し、神戸大学発ベンチャー企業の創業支援と投資育成を行うべく、株式会社科学技術アントレプレナーシップ(STE社)を2016年に設立しました。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科と連携しながら、知財・事業・財務戦略の立案・実施を支援しています。STE社の支援のもと設立されたベンチャー企業のひとつが、株式会社バイオパレットです。バイオパレット社の躍進と塩基編集技術の実用化 バイオパレット社は、科学技術イノベーション研究科の西田敬二教授と近藤昭彦研究科長が開発した「DNAを切らない新しいゲノム編集技術(塩基編集)」の実用化を目的として、2017年2月に設立されました。取締役6名のうち3名は同研究科の教授(近藤昭彦研究科長、西田敬二教授、山本一彦教授)が務めており、それぞれの知見や専門性を発揮してサイエンスとビジネスの両輪を牽引し、同研究科が掲げる「優れた最先端科学技術の事業化」を率先垂範しています。 設立前からSTE社と密接な連携を開始し、2017年4月には神戸大学と技術移転に関する契約を締結しました。さらに、STE社の全面支援のもと資金調達活動を行い、米系大手ベンチャーキャピタル3社から総額約5.5億円のシードファイナンスを実施しました。この資金をもとに、コア技術である塩基編集の医療、農業、産業バイオ、研究ツールの各分野への応用の実現性を検証しながら、知財戦略の構築を図ってきました。 その成果のひとつが、米Beam Therapeutics社(Beam社)との独占的クロスライセンス契約の締結です。塩基編集に関する基本特許を有しているのは、世界で神戸大学とハーバード大マイクロバイオーム治療のさらなる研究開発 バイオパレット社は、塩基編集を利用してマイクロバイオーム(ヒト体内の細菌叢)を改変する革新的なマイクロバイオーム治療の開発に注力し、開発パイプライン創出に着手しています。事業を加速するべく、さらなる資金調達、開発パートナーの探索、研究開発体制の増強等に取り組んでいます。研究開発機能を大幅に拡張するため、2020年10月ポートアイランドに竣工予定のクリエイティブラボ神戸に合計約360㎡を賃借し、ゲノム編集やマイクロバイオームの専門研究設備を整備する予定です。神戸大学とも一層の連携強化を図り、マイクロバイオーム治療のグローバル・リーディングカンパニーを目指していきます。(株)バイオパレット設立:2017年2月社名資本金等事業内容等(株)シンプロジェン設立:2017年2月ViSpot(株)設立:2017年9月アルジー・ネクサス(株)設立:2019年1月(株)シンアート設立:2019年3月(株)バッカス・バイオイノベーション設立:2020年3月5億4,933万円(資本準備金含む)11億1,800万円(資本準備金含む)4,000万円400万円1,000万円1,050万円学グループの2者のみであり、Beam社はハーバード大学グループの塩基編集の医療分野における独占的実施権を有する超有力ゲノム編集ベンチャーです(NASDAQ上場企業、2020年7月時点の時価総額は約1500億円)。この契約によってバイオパレット社は、マイクロバイオーム治療の分野において、塩基編集を独占的に使用する事業環境を整えました。統合型バイオファウンドリー神戸大学を中心に開発された最先端のDBTL技術を事業化合成化学・合成生物学関連ベンチャー博士課程の学生が起業、大手化学メーカーとの戦略的提携微細藻類関連バイオベンチャー神戸大学と台湾・成功大學の研究成果を事業化ウイルス安全性評価機関大手消費財メーカーとのジョイントベンチャーDNA合成ベンチャー大手バイオベンチャーとの戦略的資本・業務提携、シリーズAの資金調達(約10億円)の実現ゲノム編集ベンチャー米系大手VCを中心に約5.5億円を資金調達、米国の超有力ゲノム編集ベンチャーと独占的クロスライセンス契約締結STE社支援のもと設立されたベンチャー企業の概要世中変24

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