神戸大学 統合報告書 2020
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2波に向け、PCR検査の特性も見極めながら積極的に実施していきます。武田学長 大学でも日々刻々と変化する状況の中で3月の卒業式、4月の入学式を中止し、授業も遠隔講義にするなど大きな変化を迫られました。学生の命を守ることが最優先事項で、海外に留学している学生、逆に日本に来る外国人留学生の状況把握がまず必要でした。海外留学に関しては、渡航先などを登録するシステムがありましたが、一人ひとり確認する作業が大変でした。最終的に海外に留学している日本人学生には帰国を指示しましたが、帰国費用をどうするかが問題で、神戸大学基金を通じて学生支援の募金をお願いして 、大学独自の手当てを行うことができました。外国人留学生については、母国の状況が異なりますから、個別に対応しました。初動は概ねうまくいったと思っています。 5月の連休明けにオンライン授業で新学期をスタートしましたが、大学院も含めて約1万6000人の学生に授業を行うため、サーバーの増強などの設備投資を行いました。対面授業と遠隔授業にはそれぞれ良い面と悪い面があり、将来的にはどのように組み合わせるか、世界中の大学が試行錯誤を繰り返していくのではないでしょうか。postコロナ時代を見据えて久元市長 今私たちはwithコロナの時代を生きています。感染が急拡大し緊急事態宣言が出されている段階を「ステージ1」とすると、感染がある程度収束し緊急事態宣言が解除された段階が「ステージ2」です。ステージ2では感染に警戒しながら、市民生活の日常を回復させ、経済活動も再開させる必要があります。ステージ2がずっと継続してくれれば良いのですが、ステージ1に戻るかもしれません。大事なことは、感染拡大の状況に応じて、柔軟に、的確に、そして冷静に対応していくことです。 1918~1920年に流行したスペイン風邪では、日本で第1波、第2波、第3波の流行があり、38万8000人が死亡したと、旧内務省衛生局が報告書をまとめています。過去の人類の経験に学びながら英知を結集し対応していく必要があり、神戸大学にはより幅広い見地からwithコロナ時代をどう乗り越えていくのか提言をしていただくよう期待しています。武田学長 ワクチンの開発にどれくらいの期間がかかるか。ノーベル賞を受賞した本庶佑先生は「10年かかる」とおっしゃっていますが、遺伝子操作などの技術が進んでいるので、もう少し早まると期待しています。それでも1~2年はかかると思われるので、それまで人類が知恵を出して持ちこたえな新型コロナウイルスへの対応久元市長 新型コロナウイルスへの対応は誰もが初めての経験でしたが、市民の命と健康を守ることを最優先に取り組みました。感染が広がる中で、PCR検査をしっかり行って、その状況を市民に発信し、感染予防のため市民の皆さんの行動変容につなげていただき、医療提供体制をしっかり整えることに全力をあげました。市民生活に何が起こっているのかを把握し、手探りのところがありましたが、いたずらに不安をあおることが無いように留意しながら対応しました。 PCR検査には検体採取、運搬、検査の各段階で感染リスクがあります。微量の遺伝子を増殖させる必要があり、感染からの経過日数などによってはうまく検知できないこともあります。陰性の方の3割が陽性の可能性があるなど、PCR検査の限界もあるという点を理解いただくことに腐心しました。第38

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