神戸大学 統合報告書 2020
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ければなりません。神戸大学としても貢献を模索しており、学内でコロナ禍克服に貢献する研究を募集したところ、50以上のテーマが上がってきています。研究資金の財政的措置も講じて、全力で研究を進めているところです。久元市長 人文・社会科学分野でも神戸の地域課題への提言や共同研究に取り組んでいただこうと、若手研究者に助成する「大学発アーバンイノベーション神戸」を募集したところ、神戸大学からは14件の応募をいただきました。withコロナの時代に、大きく変化していく働き方や日常生活、教育や経済活動などのあり方、また、行政はどうあるべきかなどに関して、コミュニケーションをキーワードに大学の若手研究者の皆さんと一緒に考えていきたいですね。武田学長 人文社会系にとっては大変ありがたい助成です。久元市長 コミュニケーションを考えるときに、「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」と言われますが、本来考えなければならないのは「フィジカルディスタンス(身体的距離)」ではないでしょうか。フィジカルディスタンスを保ちながらどうコミュニケーションを活性化するかは大事です。もちろんWeb会議などネットの活用は重要ですが、実際に会い、直接的にコミュニケーションができて初めて成り立つ営みもあります。行政の仕事は窓口で直接やり取りしないと解決できない部分がありますし、ごみ収集などは人がやらないとできません。フィジカルディスタンスを確保しながら様々な工夫を凝らし、行政サービスを提供していかなければならないのです。 スポーツやビジネスでもフィジカルディスタンスが求められる時代にふさわしいありようがあるはずです。イノベーション創出の可能性武田学長 新しい時代の気づき、新しい発想のイノベーションが起こる可能性を感じますよね。コロナによってこういう状況に置かれたからこそ出てくる発想があると思います。大学の先生は普段から突拍子もない発想をすることが得意ですから、いろいろ発信してみることが大切だと思っています。久元市長 緊急事態宣言後のステージ1の時期に、かなりの人が「ステイホーム」で過ごしたと思いますが、思索の時間が与えられたという面もあります。一人の時間をどう使うかは、今後の人生を左右する影響があるのではないでしょうか。武田学長 22歳でケンブリッジの学生だったアイザック・ニュートンが、ロンドンのペスト流行を避けて田舎に引っ込み、ボーっとしていた1年半で、3つの大きなことを考えたといわれています。それは、「微分と積分」を発想し、太陽の光が虹になるのは何故かという疑問から「分光学」を考え、リンゴが木から落ちるのを見て「万有引力」を考えついたと。凡人には思いもつかない、その後の学問を大きく変えた成果です。実際にはかなりの時間をかけて研究を深めたのでしょうが、疎開の1年半が何らかのインパクトを与えたことは間違いない。そんな契機が今回のコロナによって生まれる可能性があります。コロナが与えた発想を神戸から発信していきましょう。気合いですね。久元市長 私は高校時代、微分積分が苦手でしたが(笑)。コロナの時代に新しいチャレンジをする、その環境が神戸にはあると思います。その1つが神戸大学と一緒に提案した神戸未来医療構想で、国から約3億円の交付金をいただくことになりました。ロボットを活用して医療のあり方を変える画期的な試みです。メディカロイド社(シスメックスと川崎重工業の合弁会社)の手術支援用ロボットがいよいよ商用化の段階39Dialogue

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