神戸大学 統合報告書 2020
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武田学長 私は神戸に来て30年余りですが、市街地の背後に山、前面に海があるロケーションは本当に素晴らしい。神戸大学に着任前、素粒子物理の実験に取り組むために5年余り生活したジュネーブ近郊に神戸は似ています。背後にジュラ山脈、前にはレマン湖があり、仕事するにも生活するにも快適で、メンタル面でも非常に良い環境でした。六甲山は何物にも代えがたい財産ですね。withコロナ/postコロナ時代の海外展開武田学長 将来、ワクチンが開発されて、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザ並みの対応で済むようになるのかもしれませんが、リモートと対面の交流を共存させていかざるを得ないでしょう。私の専門である加速器実験の拠点である欧州原子核研究機構(CERN)では世界中から何千人もの研究者が集まってワイワイやっていましたが、昔から「遠隔で(実験装置を)コントロールできないか」という話がありました。アメリカの研究者もヨーロッパ各国の研究者も遠隔で作業できるようにする、そういう取り組みが今後加速していくのではないかと思います。海外との交流は絶対に必要で、そのための手段はどんどん高度化していくでしょう。ただ、最後には対面の交流が絶対に必要だと思っています。久元市長 グローバル社会にあって、国・地域の経済をけん引しているのは大都市で、アジア太平洋地域の大都市は連携しながらも競争しています。何を巡って競争しているかというと、優れた人材をいかに引きつけるかという、人材を巡る競争です。神戸市はスタートアップ(成長型起業家)の育成に取り組んでいて、その有力なアプローチが「500 Startups*」です。米国西海岸を訪問した際、日本での展開を考えていると聞いて誘致しました。実際に、神戸から起業家が巣立っています。昨年の参加者の6割以上が海外からで、これに対しては批判もありますが、海外からどんどん人材を集め、スプリングボードとして世界で活躍できるような都市でないと、グローバル社会の中で生き残ることはできません。多様な人材が神戸でビジネスをスタートさせ、そのなかからユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)が生まれるようにしたい。アカデミア、経済界と連携してグローバル社会で活躍する人材の育成に挑戦していきます。そういう意味で神戸大学には大いに期待しています。*500 Startups シリコンバレーを拠点に世界75カ国2400社以上に出資する、世界で最もアクティブなシード期スタートアップを対象とした投資ファンド。2010年設立。41Dialogue

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