新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、人、モノ、情報が世界を駆け巡るグローバル社会において、かつて経験したことのない事態が広がりました。この状況を受けて、神戸大学基金[pp.56~57]のなかに「新型コロナウイルス感染症対策緊急募金」を立ち上げ、今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、経済的被害・損失を被った学生と、極めて厳しい環境下で診療医療業務に尽力している医学部附属病院とを中心に、大学全体で支援する仕組みをつくりました。早速、学内の教職員はもとより卒業生・同窓会などから幅広くご寄附が寄せられ、さらに、これとは別に病院には海外の留学生OB・OGよりマスクなどを寄贈いただきました。 また、感染症の脅威を乗り越え課題解決を図る関連研究・調査等の取り組みを社会に表明し推進することは、研究大学の使命の1つと考えております。神戸大学において実施している(あるいは実施予定の)、感染症に関する研究や取り組みのアイデア等を募集したところ、50以上のテーマが集まりました。ワクチン開発や感染予防などの医療・技術分野をはじめ、経済、健康・福祉、生活変化、歴史的観点など、幅広い観点からのアイデアが出ております。with/postコロナの時代と向き合いながら、先端研究・文理融合研究による新しい価値の創出へ挑戦を続けていきます[pp.8~9]。 神戸大学の新たな挑戦として、「かいじん海神プロジェクト」[pp.10~11]があります。2019年10月に新研究組織「うみともいき海共生研究アライアンス」を設立、2021年4月には新学部「海洋政策科学部」を設置します。これらの動きを推進する全学的な取り組みを、「海の神戸」にちなんで「海神プロジェクト」と名付け、「海の神戸大学」をめざしてスタートしました。プロジェクトの目玉として、32年間活躍してきた深江丸に代わる最新の練習船の建造も進んでおります。 新学部では、海を正しく理解し、海を「One Globe」の観点に基づいたルールとテクノロジーで利用することを学びます。とりわけ、国際的なルールの策定に関与できる人材の育成は重要で、社会科学系各研究科の知見・人材も活用しながら、教育も高度化していきます。従来から取り組んできた船員教育の面でも、AI(人工知能)時代の幹部船員のあり方を見据えた改革が必須です。 これらについては久元喜造神戸市長と対談[pp.36~41]しておりますので、そちらもご一読いただければ幸いです。 また、2020年4月には全学横断組織の「神戸大学バリュースクール(V.School)」[p.61]も始動しました。これは、人々がまだ意識していない潜在的なニーズ、これをウォンツと呼んでいますが、ウォンツから新たな価値(バリュー)の創造を目指す取り組みです。神戸大学は日本社会の閉塞感を打ち破るようなイノベーションを、科学技術とバリューの2つのアプローチで実現する方法を模索し、学問の力で日本と世界の課題解決に貢献しようと努力しております。神戸大学の「今」05President Message
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