人類はその歴史の中で、言語・哲学・文学・芸術といったさまざまな“文化”を作り上げてきました。文化を研究対象とする人文学の出発点は、人間はその歴史の中でなんと複雑なものを作り上げてきたのだろうかという驚きであり、それはどのように創造され受け継がれてきたのだろうかという好奇心です。文学部人文学科の5講座では、個々の学生がもつこのような素朴な驚きや好奇心を学問的に深めていきます。哲学講座・文学講座・史学講座がカバーする古典的学問領域では、自分の驚き・好奇心を共有する多くの知的先人がいたことを発見し、その学問的意義を理解します。知識システム講座・社会文化講座では、調査・実験といった研究手法、コンピュータを使ったデータ解析を通じて、素朴な驚き・好奇心を新たな文化の創造につなげていきます。 哲学専修古代ギリシア哲学をはじめ、ドイツ哲学・フランス哲学・英米哲学、さらには近代日本の哲学にまで至る、さまざまな時代と地域の哲学を専門とするスタッフによって、体系的な教育が行われます。哲学の基礎概念や方法論を修得し、原書を読む読解能力を固めた上で、演習や論文指導等を少人数教育で行います。また、生命・医療、科学技術・環境等に関する現代の哲学・倫理学を学ぶことができます。国文学専修国語学、国文学及び国文学近代の3分野からなり、古典から近現代までの日本文学と日本語の研究を行います。自身が置かれている歴史的・文化的位置を確かめたい学生にとっては最適のコースです。中国文学専修中国語圏の文学や思想を通じて中国文化への理解を深めます。演習では古典語・現代語のいずれにおいても、記述が行われた背景を考えながら文意を理解していきます。英米文学専修英米文学の深い理解のためには、英語のみならず、言語そのものへの深い関心と文学をとりまく社会的・文化的背景への深い関心が必要不可欠です。こうした研究によって文学の新鮮な香りを求めることから研究の一歩を踏み出します。ドイツ文学専修ドイツをはじめ、オーストリアやスイスなどのドイツ語圏の文学・文化・思想を幅広く学び、研究する専修です。時代的、地域的、そして作家や詩人の個人史的な背景を勘案しながら、ひとつひとつの言葉を丁寧に解釈することで、ドイツ語を使って生み出されてきた多様な文学作品を読み解いていきます。フランス文学専修フランス文学は流派や思潮の違いを超えて、「人間」とは何か、「言語」とは何かを真剣に考え、問い続けてきました。こうして人の精神形成にまで影響を与えたフランス文学に多様な角度からアプローチします。文学部Faculty of Letters自分の環境や生き方を別角度から見るわたしが所属している社会学専修では、個々人を超えたところにある社会のしくみについて学びます。人はなぜ一人でいるときと大勢でいるときとで異なる行動をとることがあるのだろう、自分にとっての家族とはどこからどこまでの人たちを言うのだろう、地域のお祭りを支えているのはどういう人たちなのだろう、自分と隣町に住む同級生とに与えられてきた機会は本当に平等だったのだろうか、もし平等でなかったのなら、それはどうしてだったのだろう……。これらはいずれも社会学的な問いの例です。グローバル化する世界のなかで、わたしたちの身近な社会も変容しつづけていますが、その変化を見ていくことも社会学の主要な関心です。文学部ではそのほかにも、自分の環境や生き方を考えるためのヒントを、さまざまな分野で学ぶことができます。ことば、こころ、歴史、文学、芸術、哲学、空間……。これらについて探求していくことは、単にウンチクを身につけたり情報を得たりするだけのことではなく、当たり前のように思ってきた事柄を別の角度から見てみるという「もののみかた」を学び、そして「自分が見つけたものをいかに表現し伝えるか」を模索することでもあります。本学部での学びを通じて、これまで毎日のなかで何げなく見聞きしてきたことが、ゆたかな意味と不可思議さをともなって目の前に浮かび上がってくるかもしれません。文学部 准教授酒井 朋子古典に通じて文化を深く理解し、新たな文化を創造する人材を育成哲学講座文学講座人文学科教員メッセージ文学部Kobe University22
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