今日、国内では人口減少・高齢化の進展やさまざまな制度改革、世界では経済のグローバル化に伴う国際金融の不安定化、環境汚染・地球温暖化、民族対立など、多くの難問が私たちの前に立ちはだかっています。経済学は、こうした身の回りに起きているさまざまな問題を論理的に考え、解決策を導き出し、日本・世界を発展させる上で中心的な役割を果たす学問です。経済理論や経済政策論、統計学などで分析のフレームワークを学び、社会政策、国際金融論、環境経済論などで具体的解決法を考えます。神戸大学経済学部は、社会や経済を分析し、解決策を導き出すための専門性、学際性をもち、世界で活躍できる人材を育てるため、1902年設立の神戸高等商業学校以来の実践的な精神に立ち、体系的・総合的な経済学教育を行っています。経済学部Faculty of Economics経済学とデータ経済学は社会のあらゆる問題を研究の対象としています。例えば、「インターネット上の店舗である商品を検索した場合、どのような広告を見せれば他の商品も買ってくれるだろうか?」という問題や、「保育園に行っている子供と比べて、保育園に行っていない子供の言語発達は早いだろうか?」という問題も経済学の研究対象となっています。経済学における多くの研究は、データに裏付けられた分析に関心を持っています。例えば、前述のインターネット上の広告について、消費者のweb閲覧履歴や購入履歴、性別、年齢などのデータを用いて、消費者の購買行動の傾向を推測することは、経済学における典型的な分析となります。しかし、社会のあらゆる問題に対して、それを分析できるデータが備わっているわけではありません。例えば、ふるさとの納税の効果を測定したければ、ふるさと納税のない架空の世界と比較することが必要となります。このようなデータの制約は、社会に対する実験の難しさに起因しており、物理や化学の実験と大きく異なります。経済学では、データの制約という困難がありますが、限られたデータの中からどのような主張が可能なのかを知ることは、私たちの生活において極めて有用なことです。経済学にはまだ解明されていない問題が無数にあり、その解明に関われることはとてもワクワクすることだと思います。経済学部 准教授水野 倫理経済学の知識を駆使し、難問への解決策を考える経済学科教員メッセージ経済理論は、企業や家計の行動、市場や物価の動き、生産や雇用の決まり方などを取り扱うもので、すべての経済学の基礎です。見知らぬ土地を旅するためには地図が不可欠であるのと同じように、経済理論を知ることによって初めて、新しい発見を求めて興味ある経済問題に取り組むことができます。経済現象のさまざまな動きの原因を探り、将来への展望を持つために必要な体系的考え方を修得していきます。経済理論はいろいろな仮説を提示しますが、これらの仮説を現実のデータに基づいて検証したり、あるいはさまざまな経済現象を数量的に分析する方法を徹底して学びます。1年生前期に開講される「統計学」を基礎として、「情報基礎(コンピュータの活用方法)」、「経済統計学(経済データの知識)」、「計量経済学(具体的な経済データの分析)」と、順序立てて総合的に学べるように講義を提供しています。経済政策は、長期にわたる経済の停滞、グローバル化と国内産業の調整、人口の高齢化と社会保障などの解決困難な問題に対して、政府は何をなすべきか、何が可能かを考察します。財政政策や金融政策といった具体的な手段の効果分析はもとより、政策の形成過程、経済体制や秩序、政府と経済のあるべき関係なども含めて、経済政策に関わる諸問題をより広くさまざまな角度から捉え、深めていきます。実定法学・基礎法学理論から実践へ、基礎から専門へ、一貫したカリキュラムと全国屈指の広範で高レベルな学びのフィールド理論分析産業・社会政策計量・統計分析経済学部経済学部Kobe University28
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