食料環境システム学科は、生産環境工学コースと食料環境経済学コースで構成され、環境保全と食料の安定供給の両立を目指した食料生産システムの確立、食料・環境問題の解決に有効な社会経済システムの構築を目的とする教育・研究を行います。生産環境工学コースは生産基盤である水・土地資源の利用と保全、作物の栽培から食料の流通までの食料生産システムに関する教育を、食料環境経済学コースは世界や日本の食料、食生活と食品ロス、農業・農村、環境に関する諸問題の解決をめざした教育を行います。生産環境工学コースは、食料生産基盤の基幹要素である水資源および土地資源の整備・保全、農業水利施設の整備・有効利用、農業・農村システムの整備を主目的とする地域環境工学分野と、食料の生産・収穫から加工・流通に至る食料生産システムの開発、生産系および廃棄物系バイオマスの有効利用を目的とするバイオシステム工学分野により構成されます。両分野とも、食料の生産、流通、消費に関わる人々が環境保全型社会において持続的に共生するための理論および技術に関する学際的・専門的素養を養成します。いま世界の農産物市場では、新興国などの経済発展で食料消費量が増加する一方、異常気象が頻発して生産量が変動しているため、食料の国際価格が急騰する事態が繰り返されています。世界との関係の中で、日本の食料基盤として、消費者ニーズを反映した安全な農産物を安定的に供給できる農業をどう実現すべきか、食品ロスや食料貧困の改善、食の安全・安心の確保、農村地域の活性化と環境保全などの実現に向けて、社会科学的な接近方法でリアルに現実を捉え、問題を解決するための教育・研究を行っています。動物や植物は人類生存の鍵を握る貴重な生物資源です。資源生命科学科では、有用な動物、植物、微生物とそれらの相互関係を遺伝子から生態系レベルまで幅広く理解するとともに、生物資源の利用や開発に関わる基礎理論を学びます。応用動物学コースと応用植物学コースでは、それぞれ動物と植物を中心に生物資源の探索・生産から利用・開発に至るさまざまな問題に取り組める専門的な知識を身につけます。応用動物学コースでは、実験動物から家畜・野生動物にいたる様々な動物に関わる生命現象と、動物が本来もっている多様な機能とその制御機構を理解し、動物の生産性の向上、有用な動物の開農学部Faculty of Agriculture食・農業・農村を科学し生活を豊かに途上国の農村を初めて訪問したのは、約30年前のことです。当時、本学農学部1年生であった私にとって、それは非常に衝撃的な体験の連続でした。路上には、昼間から物乞いの失業者たちが溢れ、夕闇が迫るにしたがって身売りの少女たちがどこからともなく湧き出てくる悲惨な光景に絶句しました。医療費が払えずに栄養失調で苦しむ少女や、銃で武装した地主の監視の下で無表情にただ黙々と働いていた小作人の姿を今でも忘れることはできません。どうして途上国の農村は貧しいのか。こうした学生時代の素朴な疑問が、研究の出発点になっています。現在は食料経済学の視点から、貧困層の食生活について研究しています。理系の農学部なのに経済学?と疑問に思われるかもしれません。農学は最も多様性に富んだ学問のひとつです。農学部では、動植物に関する生物学的・化学的研究だけでなく、食品に関する栄養学的研究、土壌・水利や農業機械に関する工学的研究、農業・農村や食品流通、消費者意識に関する社会科学的研究が行われています。「食」は健康的に生きていくうえで欠かせません。しかし、世界全体で約11億人が栄養失調に苦しんでいる一方で、6億人以上が肥満状態にあります。どうしたら、安全・安心な食料の安定供給や健康的な食生活を実現できるのでしょうか。食・農業・農村に関する研究を通じて、私たちの生活を豊かにする方法を探してみませんか。農学部 教授石田 章工学的、社会科学的アプローチで食料環境システムを学ぶ食料環境システム学科食料生産や自然環境を支える動植物を深く学ぶ資源生命科学科教員メッセージ生産環境工学コース食料環境経済学コース応用動物学コース農学部Kobe University40
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