神戸大学 令和4年度 学生生活案内
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 総合・国際文化学図書館(鶴甲第一キャンパスに設置)に「人権図書コーナー」を設けて、人権に関する図書(人権一般、同和問題、少数民族・外国人、障害者、ジェンダー、子ども・高齢者、環境、平和、情報(プライバシー・知る権利等)を整備していますので、ご利用ください。− 27 −人権図書コーナーについて(17)人権について 「知らない」ではすまされない ─守りはぐくむ“人権の束” 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等である」 これは、1948年に国連で採択された「世界人権宣言」の第1条に掲げられた大原則です。しかし、私たちの人権は、時として不当に侵害され、差別や社会的排除が横行することがあります。意識的ないじめや差別を許してはならないのはもちろんですが、無知から起きる偏見や差別も多々あります。知らない間に被害者になったり、加害者になったりしないために、人権について学び、自身の問題としてとらえ、もしも人権侵害があると気付いた時には、改めていく努力をしなければなりません。 人権は、英語で「Human Rights」と記されます。「Rights」と複数形になっているのは、どうしてだと思いますか? 「言論の自由」や「教育を受ける権利」、「職業選択の自由」など、現在、私たちが手にしている人権は、はじめからすべてが規定されていた訳ではなく、長い歴史の中で一つ一つ獲得されてきたものだからです。 たとえば、皆さんが日本人であれば、20歳(2016年6月からは18歳)になると当たり前のように選挙権を得ます。しかし、わずか70数年前まで、女性に選挙権はありませんでした。世界を見わたせば、独裁政権下で、思想信条や発言の自由が認められていない国がまだまだあります。紛争地域や最貧国の人たちは、最も基本的な生存権さえ脅かされています。 つまり今、皆さんの生命や社会生活を守っている“人権の束”は、先人たちが苦労して積み上げてきたものといえます。その延長線上で、権利を享有する私たちは、この“財産”をしっかりと守り、まだ保障されていないさまざまな権利の確立に向けて、努力していく責任があるのです。 日本国憲法は、私たちの自由や平等を基本的人権として保障し「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」(第14条)と明記されています。しかし、以前はこの国でも、封建制度を堅持するために「えた・非人」という被差別階級が政策的につくられ、その差別の解消には長い時間がかかっています。女性差別や障害者差別についても、不断の努力で少しずつ改善されてきましたが、完全にはなくなっていません。近年では、情報技術(IT)の普及に伴い「ネットいじめ」など、新たな人権侵害のケースも出てきています。インターネットの匿名性を借りて、人の悪い噂などを面白半分に流すような卑劣な行為には、絶対に加担すべきではありません。 皆さんが大学生活を送る上でも、人権侵害の被害者や加害者になってしまう落とし穴があります。たとえば、楽しいはずのコンパで、無理にお酒を飲ませるのは「アルコール・ハラスメント」という、生命にもかかわる人権侵害行為です。「ドメスティック・バイオレンス(DV)」という夫婦間で起きると考えられていた身体的・精神的暴力についても、最近は学生カップルの間にまで広がってきているようです。「セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)」や「アカデミック・ハラスメント(教育・研究上の不当な扱い)」といった人権侵害行為には、強い立場にある人が、その地位や権限を悪用して、弱い立場の人を支配しようとする共通の構図があります。「愛情」や「教育的指導」を口実にしているだけに分かりにくいのですが、問題の本質をとらえ、拒否あるいは告発する勇気を持ってください。 また、大学生活では、さまざまな国から来た留学生と接する機会も増えます。初めは戸惑うかもしれませんが、多様な文化や価値観に触れるチャンスを生かしてもらいたいと思います。 2011年の東日本大震災では1万5千人を超える人命が失われました。ここ神戸市でも、1995年に起きた阪神・淡路大震災によって、6430人以上もの方が亡くなりました。神戸大学でも、当時の神戸商船大学(現・神戸大学海事科学研究科・海洋政策科学部)と合わせて47人の学生や教職員が犠牲になっています。この地で学ぶ皆さんには、生命の大切さや助け合うことの尊さを心に刻み、地域コミュニティの一員である、という自覚をもって、有意義な学生生活を送っていただきたいと思います。多様性を認める寛容さや柔軟性をもち、自分の痛みと同じぐらいほかの人の痛みにも敏感になること。これが、本学の学生として学ぶにあたり、もっとも大切な姿勢なのです。 本学では、ハラスメントなどの人権侵害に関する相談窓口を設けています。詳しくは43ページを参照してください。 新入生の皆さんがこれらの意義を自ら深く考えるための一助として、『世界人権宣言』(1948年12月10日)、『国際人権規約』(1966年12月16日)(抄)、『世界人権会議ウィーン宣言及び行動計画』(1993年6月25日)(抄)、『日本国憲法』(1946年〔昭和21年〕11月3日公布、1947年〔昭和22年〕5月3日施行)(抄)等を神戸大学ホームページに収録しています。※「人権について」 URL https://www.kobe-u.ac.jp/campuslife/edu/human-rights/index.html  神戸大学のホームページから「教育・学生生活」→「教育」で、「人権について」リンクしています。

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