神戸大学広報誌『風』 Vol.18
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100年の歴史は非常に重く、背筋が伸びる思いです。神戸大学工学部は、優秀な人材を輩出してきており、教職員、OB・OGの方々の活躍によって社会的評価も高い。その伝統を引き継ぎ、新たな第一歩を踏み出すことに、重大な責務を感じています。国際都市・神戸にちなんで、「世界とつながる『知』の拠点、神戸でのづくり、ことづくり、そして続くしあわせづくり」というビジョンを掲げました。工学は、日本の高度経済成長の支えとなったものづくりを支えてきた学問で、工学教育・研究は、技術者の育成を重要な目的として進められてきました。その後、日本の産業構造ずっとは変化し、今やGDPの6割以上をサービス業が占めています。ものづくりの重要性は変わりませんが、新分野としてサービス的なものとの融合、あるいは、つくったものがどう生かされるかまでを含めて工学研究の対象とするようになっています。ものをつくるだけではなく、それをどう生かすか、そして最終的に人類の安寧に寄与することが重要です。次の100年に向けて、そこまで含めた研究・教育を実現するという思いが、このビジョンには描かれています。 そうです。大学の工学教育は、本来、科学技術を社会に還元するために行われています。科学とは社会のいろいろな事象を見て普遍的な法則を見つける作業であり、その法則を社会に還元するとき、社会を構成する人々の個性や違    も   いに合わせて調整する行程を工学が担います。たとえば、医学の分野で新しい治療法が見つかったとしても、治療の現場では患者に応じた処方が不可欠です。だから工学技術者とは、いわば町医者のような存在なのです。新しい科学技術を社会のいろいろな問題にあてはめ、加工して、誰もが喜ぶようなものにしていくことが「しあわせづくり」につながるわけです。だけでなく、その技術が社会に与える影響まで理解することが、工学を学ぶ者の使命となります。そこで私たちは、今後の教育において「教養」を一つのテーマに設定しました。教養とは、私の言葉でいえば「価値判断ができること」です。そのためには、科学技術を勉強するそうです。意思決定の場面で「科学|100周年を学部長として迎える心境は?|100周年ビジョンに込めた思いは?|どういう社会を実現するかが重要だと?|価値判断とは、倫理的な意味での?神戸大学大学院工学研究科・工学部 創立100周年ビジョンFaculty of Graduate School of Engineering FaGcrualtdyu oaft eE nSgcihnoeoelr oinf gEngineeringFacGurlatyd uoaf tEenSgcinheoeorli onfg EngineeringEngineeringSpecial Topic技術がもたらす「より良い社会」を提案し、実現する創造性を育む04kaze Vol.181992年岐阜大学工学部土木工学科卒業。1994年岐阜大学大学院工学研究科博士課程修了。長岡技術科学大学環境建設系助手、TNOオランダ応用科学研究所客員研究員(文部科学省在外研究員)、鳥取大学工学部社会開発システム工学科准教授等を経て神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻教授。2021年から工学研究科長・工学部長。専門は土木計画学。大学院工学研究科 市民工学専攻教授工学研究科長・工学部長KOIKE Atsushi小池 淳司100th Anniversary

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