神戸大学広報誌『風』 Vol.18
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があるものの目撃譚が残ることはわかるのですが、幽霊のように体がなくて本来見えないはずのものを、なぜ多くの人が同じようなものとして目撃して、共通性のある語りになるのか、その理由に興味を持っています。私自身は、物語上における不思議な現象を「怪異」と呼び、怪異を起こすものを「怪異体」と呼んでいます。そこに神様や仏様も含めるので、お叱りを受けることもありますが(笑)。聞き取りも行いますが、私の専門は文章の中の語りを読み解くことで、「話型研究」を行っています。語り手から聞き取った話を記録した文章の中の、話の流れ方の特徴を読み解いて、そこに話し手の勘違いや夢との混同、あるいは話し手自身の想像や空想、意図的な創作が加えられていないか、といったことを分析することができるんです。記録された内容が事実かどうかが私にとっては非常に重要で、怪異という不確かなものが、どういう要素によって事実化されるのか、どういう要素が入っていれば事実として継承されるのか、という点が研究のポイントです。ですから私の研究は、どちらかというと文学的なテクスト研究と言えるかもしれません。語りや文章に出てくるもの、たとえば「夜」「坂道」「葬儀」「光」といったすべての要素をモチーフといいます。それらモチーフの組み合わせや、モチーフどうしのつながりが不自然な場合は、創作や夢などの整合性のないものが混入していると判断できます。そこから事実性が高いか低いかを見極めます。これまで聞いたことのないモチーフの組み合わせが見られるにもかかわらず、非常に事実性が高いと判断できるテクストに出合ったときは、とてもワクワクします。私は以前から、神戸大学・国際文      化学研究推進センターに所属していた2人の研究者とともに、「神戸神話・神話学研究会」、略して神神神(しんしんしん)という研究会を作り、ポップカルチャーと神話のつながりについての共同研究を行っています。「鬼滅の刃」にはもともと個人的に興味があったのですが、作品の人気が非常に高まった時期に、雑誌やウェブメディアに「鬼滅の刃」に対するネガティブな記事が多数掲載されるようになったのです。たとえば、若い登場人物たちが命を捨てて戦うことをためらわない姿が、第二次世界大戦時の特攻の美化につながる、といった批判です。しかし、物語に立ち返って解釈すれば、この作品にはそうした政治的な意味や戦争賛美の意味はないと私は考えていて、それを読者に伝えたいと思ったことが個人的な動機です。 「鬼滅の刃」について書かせていただきたいと、私の方から何社かのメディアにアプローチしました。作品自体に立ち返りたいというこちらの意志を汲んでくださったのがアエラドットの担当者で、自由に書かせていただきました。とはいえ、いきなり政治的な解釈への反論を書くわけにはいかないので、キャラクター論で書き始めて、何本か記事を書いた後、特攻の美化ではないという解釈も発表することができました。一般的に、ウェブメディアでヒットの目安とされるアクセス数は100万PVですが、最初の記事から100万を超え、その後も同様の反響を連続|実際に伝承の聞き取り調査も行う?|具体的に、どのようにテクストを読み解く?|「鬼滅の刃」について書くようになったきっかけは?ドット)」で執筆を始められた。|そして、「AERAdot.(アエラ|連載への反響は?「鬼滅の刃」キャラクター論の連載に400万PVのアクセス!植先生が2020年12月からニュースサイト「AERA dot.」で発表してきた『鬼滅の刃』キャラクター分析論が単行本化されました。配信されるたびにSNSで話題になり、『鬼滅の刃』ファンの認知度も高い人気連載記事に大幅加筆、新たなキャラクター分析も追加されています。登場人物のセリフや行動の裏にあるものを理解できる一冊です。植 朗子先生の最新著書扶桑社 本体1,500円+税09特集 2 神大 研究ズームアップキャラクター論で読み解く『鬼滅の刃』Special Topic鬼滅夜話

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