神戸大学広報誌『風』 Vol.19
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食品栄養科学という研究室で食べ物が体にどう影響を与えるかを探究しています。その一環で味覚にも興味があり、研究しています。私の専門は心理学ですが、「仲間はずれにされたときの心の痛み」を可視化するために脳を研究しています。研究をしていて分かってきたのは、仲間はずれにされている時は人が受ける物理的な痛みと同じような脳の領域が活性化するということ。いわゆる心の痛みと体の痛みって結構似ているっていうことなんですが…これってどのくらいインパクトあるんですかね?面白いと思います!学会でお見かけしたことのある尾崎まみこ先生(現名誉教授)と大学内ですれ違った時に、私から「こんにちは!」と声をかけたのが始まりです。数年が経ち、学会のお手伝いをするなかで「何か一緒にお仕事できたらいいよね」と言う話になり、研究対象にも近い「匂い」のプロジェクトに引き込まれていきました。私が神戸大に来た2020年はコロナ禍で、学部の中ですらコミュニケーションが取れないような状況だったので、学部を跨いでコミュニケーション藍原――今回のプロジェクトに参加したきっかけは。藍原柳澤ちょっと面白そうな研究、一緒にどう?赤ちゃんの匂いを異分野共創で探求新生児の肌着の匂いが女性に好ましい心理効果を示すことが報告されている。理学研究科の尾崎まみこ名誉教授らの研究グループは3年前、新生児の頭から匂いを採取し、世界で初めて新生児の匂いの化学構成を明らかにした。その成果を発展させ、赤ちゃんが匂いによって母親や他者との心理的交流をしているのかどうかを解明する研究が、科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業(探索加速型)に採択された。「新生児の頭の匂い」と「母親の羊水の匂い」の作用を多面的に追究し、母子の不安・ストレスの解消や虐待の予防などの可能性も探る意欲的な研究には、化学分析や内分泌応答解析、心理学など幅広い専門分野からのアプローチが必要になる。研究に参加する農学研究科の藍原祥子助教と人文学研究科の柳澤邦昭講師が、異分野共創の可能性を話し合った。――お二人の専門分野をお聞かせください。藍原柳澤[kaze]120th ANNIVERSARYプロジェクト型03大学院農学研究科 生命機能科学専攻 助教2003年東京大学農学部卒。2008年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。ネスレリサーチセンター(スイス) Food Consumer Interaction department 研究員 (Associate R&D Specialist) を経て現職。藍原 祥子AIHARA Yoshiko匂いによる母子間交流を活用した安全・安心の創造16

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