神戸大学広報誌『風』 Vol.19
17/24

が取れるわけがなかったんですけど(笑)。大坪庸介先生(現東京大学准教授)が「柳澤さん、ちょっと面白そうな研究があるんだけど一緒にどう?」みたいな感じで招き入れてくれたのがきっかけです。嗅いだ側の行動がどのように変わるかを、感情にもよく結びつくと言われているホルモンを測って調べます。それが感情や行動とリンクするかどうかというところを任されています。時に、何らかの行動変容が、より現実場面に即した形でポジティブな効果として出てくるといいなと考えていて、それをとらえたいのですが…。現在赤ちゃんがいるお母さんにアプローチして実験をするのは相当ハードルが高い。苦労しています(笑)。私はまず切り口として、匂いを私は人が赤ちゃんの匂いを嗅いだ先ほどの行動変容っていう言葉の「行動」は、実験動物を扱っている私からすると、ネズミが「飲む」、「寝る」といったように「実際にどう動くか」なんです。同じ言葉でも心理学者の先生方は違うイメージを持たれていたことに驚きました。心理学では、課題をやっている時の「反応する時間」とか、「行動の速さ」の他に、アンケートに対する回答なども通常の行動変容に近いような捉え方をします。なるほど、見えているものが違いますね。本当にそうなんですよ。自分の分野ではこれが当たり前。でも他の皆さんと話しているとどうもそうじゃない。今はやっとこさお互いが何を気にしているか、何ならできそうかっていうのが分かってきた状態です。次からはもうちょっとストライクゾーンに近づけるのではないかと思っています。そうなってくると、これからも共同研究がやりやすくなりますよね。旅行をしているイメージを想像するだけでハッピーになれる現象があるんです。それに何か足したいなっていう思いが元々ありました。「匂い」の研究に関わるようになってから「もし現地の匂いを使えたら…」と考えるようになりました。自分のやっている研究にもプラスに働いていると思います。研究のことを考える時に、自分の頭の中の限界がなくなってくれればいいと思います。同じ物事でも他分野の研究者の刺激で見る方向を変えて、「こういうこともできるんだよ」って可能性が膨らむ。そういうふうに異分野共創を使っていきたいです。係や母親自身にどのような影響があるのかを、失敗してもいいからエビデンスを残せたら、将来的に価値があるんじゃないかというビジョンも拡がってきて、個人的には相当刺激を受けています。今回のプロジェクトに参加していなければ、私にこの発想はなかったように思います。――「匂い」の研究にどのように関わっていますか。藍原柳澤――異分野の研究者との共同研究の難しいところは。藍原柳澤藍原柳澤藍原――異分野共創がもたらす研究への影響は。柳澤藍原柳澤「匂い」の研究についても、母子関鈴木 一有 浜松医科大学 医学部 特任准教授妹尾 千代 浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター 特任研究員磯村 直美 浜松医科大学 医学部附属病院 診療助教河崎 秀陽 浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター 准教授永田 仁史 岩手大学 理工学研究科 教授大坪 庸介 東京大学 人文社会系研究科 准教授大学院人文学研究科 講師2006年東亜大学総合人間・文化学部卒。2011年広島大学大学院総合科学研究科修了。同大日本学術振興会特別研究員、京都大学こころの未来研究センター特定講師などを経て現職。17共創と協働ProjectMembers尾崎 まみこ 神戸大学 名誉教授/奈良女子大学 協力研究員藍原 祥子  神戸大学 大学院農学研究科 助教柳澤 邦昭  神戸大学 大学院人文学研究科 講師祇園 景子  神戸大学 バリュースクール 准教授小早川 達  産業技術総合研究所 上級主任研究員針山 孝彦  NanoSuit株式会社 代表取締役柳澤邦昭YANAGISAWAKuniaki

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る