神戸大学広報誌『風』 Vol.19
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学長 基礎医学に進んで、いま考えている方向に取り組んでもらうことは、医学部にとっても必要なことだと思います。臨床現場はアイデアの宝庫です。臨床で疑問に思ったことを、基礎医学に戻って研究するのは楽しいですよ。学長 ハンブルク大学から来られたアーネさんは、いま日本語の勉強もしていますか?アーネ 特に日本語の勉強はしていませんが、日本語の授業はすべて受けています。学長 いま修士課程ですね。ハンブルク大学では何を学んでいましたか?アーネ 日本学です。ハンブルク大学の文学部で、文学を専門として研究していました。日本学の領域で社会学などの方向に研究を進める方もいらっしゃいますが、自分は文学です。ハンブルク大学から神戸大学へ留学したのは、私が初めてです。学長 国際文化学研究科ではどんなことを研究しているのですか?アーネ 主に翻訳です。日本文学の翻訳、ドイツ語だったり英語だったり、そういう翻訳における美学について、修士論文を書きたいと思っています。学長 ダブルディグリー(所属大学院と留学先の両方の修士学位取得を目指す)なので1年間こちらで学び、ドイツに帰って1年間で最後まで仕上げる形になりますね。将来目指していることは何ですか?アーネ いったんハンブルクに帰らなければならないわけですが、将来は日本で就職したいと思っています。具体的にはまだはっきりしていませんが、外交関連の道に進めたらいいなと思っています。また、翻訳もとても好きなので、そういう仕事にも興味があります。学長 ありますが、神戸と同じように住みやすそうな港町ですね。神戸大学はハンブルク大学と比べてどうですか。山の上にある狭い大学でしょう?アーネ が、神戸大学のキャンパスはハンブルク大学より広いです。神戸はとても住みやすいし、山も海もあって、すごく良い街だと思います。学長 ですね。今後は研究一筋ですか?荻巣 いうのが正直なところです。文系の博士は日本の企業の求人がほとんどありませんので。アメリカでは経済学博士の需要は多いんですが、僕は英語が苦手で…。学長 くことになりますよ。経営学の方では実践的な取り組みをいろいろとされていますが、経済学は基礎学問に近い部分があるので、いろいろな意味で英語が必要になってきます。荻巣 スを取り上げて日本語で研究成果をま私はハンブルクを訪れたことがハンブルクに坂はありません荻巣さんはいま博士課程2年目そうですね。研究職しかないと研究者になると論文は英語で書ケーススタディで、日本のケーとめれば、興味を持つ読者が多いのですが、もっと抽象的な概念を扱う場合は読者が限られます。多くの人に読んでもらうためにも英語は必須とよく言われます。学長 去年から始まった博士学生フェローシップ(優秀な博士課程後期課程の大学院生に対する支援金)の給付を受けられるようになって、自分の研究時間をかなり取れるようになったでしょう?荻巣 はい。とてもありがたいです。学長 大学院の博士課程に進む人が少なくなっているのは、博士課程までいくと就職ができないという実状があるからでしょう。国は研究力が落ちているので博士を増やしなさいと言っていますが、そのためには企業に博士を受け入れる土壌を作る必要があります。博士課程の学生が自分の将来を描けるようにしないといけないと思います。荻巣 そこはすごく大切なことだと思っています。あけすけに言うと、経済学研究科の場合、修士で卒業した方がペイ(収入)が良いんです。博士までいくと、生涯収入がガクンと落ちます。ただ、博士課程まで学んだ人は皆、すごく役に立つスキルを持っているはずです。企業研究においても、データは扱えるし、現実を見る目が坂は多いが魅力的な街博士課程の学生を支援学長×在学生座談会特集 1 学びをそれぞれの未来につなぐ07

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