働きをうまく利用できれば、肥料の大量投入も不要になり、SDGsに配慮した農業を実現できるでしょう。そういう研究も進めたいと思っています。光合成をやめた具体的なメカニズムにはまだわからない部分も多いですが、どういう変化が光合成をやめる進化と協調して起きるのかについては、かなりわかってきています。私は他の生き物との関わりの中で光合成をやめる進化が起きてきたことに注目していて、一つは花粉を運ぶ昆虫との関係性です。花粉を運ぶ昆虫と言えばチョウやミツバチなどが一般的ですが、光合成をやめた植物は他の植物が利用できないような真っ暗な環境でも生育します。そういう環境には他の植物が生えないので、チョウやハチがやってこない。そんな環境でどうやって受粉しているのかを調べてみると、ショウジョウバエやトビムシの仲間のような、じめっとした暗いところにいる昆虫に花粉媒介を頼る種類や自家受粉で種子を作る戦略を選んだ種類もいるなど、いろいろな戦略があることがわかりました。 光合成をやめる進化は一足飛びには起こらないので、同時進行的にいろいろな進化が複合的に起きたはずです。種子散布についても同様です。光合成をやめた植物が生える深い森の中では、風による種子散布ができないので、動物散布(動物に種子を運んでもらい分布を拡大する方法)に頼る必要が生じます。しかし、光合成をやめた植物には非常に小さく、目立たないものが多いので、哺乳類や鳥などの果実を食べる動物を呼び寄せることはできません。そこで、カマドウマやゴキブリのような、普通は種子を運ばない生物に果実を食べさせて、糞とともに種を出すことで種を運ばせる種が、独立に進化していることがわかりました。 ルドワークに時間を使えませんが、誰もが一番です。学生の時には1年の半分以上は山にいて、北海道から沖縄まで、いろいろな場所を転々としながらフィールドワークをしていました。特に屋久島では1か月ほど山に籠もりきりということもありました。現在はそれほどフィー知らない生物の生き様を観察できた瞬間は研究活動で最もエキサイトする瞬間といっても過言ではないでしょう。昆虫や種子を運ぶ動物との関係は現地で観察できますが、地下の相互作用は目に見えないので、その観察は実験室での作業になります。根の部分に菌類がいるので、根ごと持ち帰り、その中にいる菌類のDNAを分析して、どの種類の菌類と共生しているかを調べます。また、その菌を培養して、そこに光合成をやめた植物の種を播いて育てて、きちんと共生関係が構築されるかも確認します。に、共生している菌のDNAも入っていやはり自分の眼で直接観察すること地上の相互作用、つまり花粉を運ぶ根の中には、その植物のDNAとともます。植物と菌類ではDNAの配列がかなり異なります。菌類のDNAだけを増幅し、その配列を調べれば、どの菌と共生しているかがわかるという訳です。さらに言うと、その菌類は基本的に、他の光合成をする植物から炭素をもらって生きています。つまり、その菌類から炭素を得ている光合成をやめた植物は、間接的に、周辺の植物から炭素を得ていることになります。根の中に入っているDNAを調べること|光合成をやめた進化の過程については?|そんな実態をどのようにして見つけるのですか?る相手がわかる?DNA解析を根拠に、自然保護活動も進める|フィールド以外の研究は?|DNAを調べれば共生関係にあ宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島山でギンリョウソウを調査しているときの様子。シュンラン属の祖先ヘツカラン独立栄養シュンラン樹上から地上で生活するようになった葉が少なくなり暗い林床で生活し始めるナギランマヤラン部分的菌従属栄養根も葉もなくなり体は薄い乳白色にサガミランほぼ完全菌従属栄養kaze Vol.2010光合成をやめた植物の進化の道のりを示す系統樹
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