神戸大学広報誌『風』 Vol.20
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DNA解析で、生物どうしの目に見えない相互作用が明らかにで、光合成をやめた植物が菌のネットワークを通じて、どの植物から炭素をもらっているかがわかるわけです。こうした情報は重要です。なぜなら、光合成をやめた植物には絶滅危惧種が多く、保全のためには共生菌となる特定の菌類と一緒に守らなければならないからです。しかし、その菌類がどういった植物に養われているのかがわからないと、その菌類を守ることはできません。菌糸のネットワークを通じて、炭素を共有している植物を特定することで、森林伐採が避けられない場合でも、最低限このエリアだけは絶対に守らなければならないというコアなエリアがわかるわけです。に入り込み、寄生する存在です。このため生態系に余裕がある安定した森林でなければ生育できません。   います。しかし残念ながら、低地の森ということは、その森が菌類や昆虫なども含めて豊かであることを象徴してに生息する光合成をやめた植物は、あまり保護が行き届いていない現状があります。一方で、光合成をやめた植物が生えているということは、そもそも光合成をやめた植物は、森の生態系このため、この植物がたくさんある守るべき地域であることの一つの証拠になるので、光合成をやめた植物の重要性を、地元の人たちと一緒にアピールする活動を行っています。日本は、世界でも一番植物の分類が進んでいる地域と言われますが、光合成をやめた植物は、ごく一部の期間しか地上に姿を現さないため研究が進んでおらず、日本でもまだまだ新種が見つかります。これまで本当に誰も知らなかった種類が、日本からでも、まだまだ多数見つかる点で、とてもロマンがあるグループです。 今後も自然を見つめることで得られたアイデアを端緒としながらも、新しいテクニックも積極的に取り入れ、挑戦的な問いにチャレンジしていきたいと考えています。光合成をやめた植物については、やはりどのようなメカニズムで、菌類をだませているのかに興味があります。お互いに利益をもたらしていた関係から、どのようにして寄生者になったのか。これを明らかにできれば、生物同士がどのような時に助けあい、どのような時に敵対するのか、理解を深めることができると考えています。れていますね。|先生は実際に自然保護活動もさ|先生も新種を発見された?|今後の研究は?11木登りする食虫植物「Nepenthes veitchii」とともに(東南アジアのマレー諸島に位置するボルネオ島にて)特集 2 神大 研究ズームアップ[01]Special Topic20〜30くらいは見つけています。

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