神戸大学広報誌『風』 Vol.20
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課程)には支援を始めていますが、マスター(修士課程)の支援はないので、そこを大学が担います。さらに、ポスドクから若手研究者となっていくときにも、環境を整える意味で研究費を支援していきます。そして、優秀な研究者はテニュアトラック制度(任期付き雇用で若手研究者に自立した研究環境で研究・教育者としての経験を積ませ、最終審査で専任教員となるキャリアパスを提供する制度)によってどんどんパーマネントに雇用する、そこまでをシームレスにサポートしていきます。 教育面では、まず大学院の改革です。博士課程の学生には、自分の専門性を超えて、異分野共創に資することができる広い視野や、新しいことに挑戦していく姿勢が求められます。そこをフォローする異分野共創の人材育成プログラムを作り、大学院共通科目を創設して、科学技術イノベーションを推進できる人材を育成します。また、医療システム・機器開発を先導できる人材を育成する新専攻として、医療創成工学専攻を立ち上げます。育てるための体系的な教育を行います。神戸大学はもともと、科学技術イノベーション研究科、バリュースクールなど、他大学に比べてアントレプレナーシップ教育において充実したメニューを持っています。これらを体系化し、できる限り多くの博士課程の学生に提供していきます。共創に基づく社会実装・価値の創出、特にベンチャー(スタートアップ)の創出です。本当の意味で大学が日本を変えていくドライバーになるためには、大学こそベンチャーを作っていかねばなりません。そこで、ベンチャーを創出するスキームを構築します。第一の取り組みでお話ししたホールディングス化をベースに、まず、研究を発明(知財)に引き上げます。次にシード段階での支援を行う神戸大学GAPファンドさらに、アントレプレナーシップを第四の取り組みは、社会との対話・(KUI社が運営)を拡充し、大学発ベンチャーを作るアーリー段階では神戸大学ファンド(KUC社が運営)を運用して支援します。この一連のシームレスなスキームを持ち、かつ完全な民間資金でキャピタルを構築しているのは神戸大学だけであり、先進的な取り組みと言えます。資金面以外でも、アントレプレナーシップセンターを設置して教育や経営指導などの伴走体制を整えるとともに、戦略企画室が立案する知財化戦略に基づき、知財アセットのマネタイズを可能にする知財マネジメントを実行します。また、ステークホルダーとの対話と共創を強化し、社会的な価値の創出につなげていきます。ベンチャーの創出を強化することは、今回の経営改革における資金循環のカギです。そこをシームレスに行える総合的な体制を確立します。この構想の根底にあるのは、異分野      共創です。イノベーションの原点は異分野の連結であり、普通にはつながることがなかったものがつながることによって、これまでとは全く違うものが生まれます。だからこそ、異分野共創の考え方が重要なのであり、それを神戸医療産業都市という神戸の地の利を生かしながら推進することがポイントになります。神戸大学は、大学と社会との間で「知」「人材」「資金」が好循環する「異分野共創研究教育グローバル拠点」を構築し、持続的な事業成長を実現していきます。キーワードは異分野共創ベンチャー創出スキームを構築071988年に京都大学大学院工学研究科で博士号取得。九州工業大学助教授、神戸大学工学部教授、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科研究科長などを経て2021年より副学長(大学改革・評価担当)。神戸大学先端バイオ工学研究センターバイオベース燃料・化学品研究部門・部門長、理化学研究所環境資源科学研究センター副センター長などを兼任。Special Topic特集 1 神戸大学が挑む経営改革副学長(大学改革・評価担当)大学院科学技術イノベーション研究科 教授近藤 昭彦KONDO Akihiko

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